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コラム

A列車jp発「お出かけ、わたらせ渓谷鐵道」

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都市開発鉄道経営シミュレーション「A列車で行こう」に制作協力いただいている
各鉄道会社をフィーチャーして、歴史や沿線の魅力について触れていく応援企画。
今回ご紹介するのは「わたらせ渓谷鐵道」。
さあ列車に乗ってお出かけしましょう。

そもそも「わたらせ渓谷鐵道」って?

 わたらせ渓谷鐵道は、群馬県、栃木県を走る第三セクター鉄道です。

 関東平野の端に位置する桐生駅(群馬県桐生市)から、渡良瀬川の渓谷に沿って山へ分け入り、終点の間藤駅(栃木県日光市)まで44.1kmを結びます。

 終点の間藤駅は日光市ですが、東照宮などが存在するいわゆる「日光」とは山ひとつ隔てた場所で、かつての所在地は「栃木県足尾町」でした(いわゆる「平成の大合併」で2006年、足尾町は日光市などと合併)。

 わたらせ渓谷鐵道線は、足尾銅山で産出された鉱石の輸送などを目的に、私鉄の足尾鐵道によって建設された路線です。1914(大正3)年8月25日に、全線が開業しています。

 足尾はかつて「日本一の鉱都」とも呼ばれ、大正時代には宇都宮に次ぐ栃木県第2の都市に発展。そうした路線の重要性から足尾鐵道は国有化され、1918(大正7)年6月、国鉄(鉄道院)の足尾線になりました。

 しかし、1973(昭和48)年2月に足尾銅山は閉山し、沿線では過疎化が進行。国鉄末期の1984(昭和59)年6月、足尾線は第二次特定地方交通線――廃止対象路線に指定されてしまいます。

 それを引き継いだのが、わたらせ渓谷鐵道です。1987(昭和62)年4月1日の国鉄分割民営化でJR東日本の路線になった足尾線を引き継ぎ、1989(平成元)年3月29日から営業を開始しました。

 歴史の教科書にも登場する足尾銅山が誕生のきっかけで、かつては貨物列車で賑わった路線ですが、わたらせ渓谷鐵道になってからは、観光客の輸送に力が入れられています。

 Windows、Nintendo Switch「A列車で行こう ひろがる観光ライン」には、わたらせ渓谷鐵道のWKT-510形ディーゼルカーを収録。日本の近代化を支えたわたらせ渓谷鐵道線、その歴史に想いをはせながら走らせると、またロマンがあるかもしれませんね。

 ちなみに、わたらせ渓谷鐵道は略して「わ鐵」とも呼ばれます。

わ鐵の魅力「車窓が紅葉名所」

 現在は観光路線として力が入れられている、わたらせ渓谷鐵道。その魅力のひとつは「紅葉」です。

 先述の通り、関東平野の端にある桐生駅から渡良瀬川の渓谷に沿って山へ分け入る、わたらせ渓谷鐵道。紅葉の季節になると、鮮やかに彩られた渓谷の風景が車窓に広がります。

 また、渓谷をさかのぼっていく――標高を上げていくのも、「わたらせ渓谷鐵道の紅葉」における大きなポイント。

 起点の桐生駅は標高およそ110m、終点の間藤駅は標高およそ660mと、その差は約550m。このため、わたらせ渓谷鐵道は区間によって紅葉の見ごろが変わり、10月下旬から11月下旬まで、約1か月にわたって区間ごとそれぞれの紅葉を車窓に楽しめるのです。

 わたらせ渓谷鐵道によると、年によって異なるものの、渡良瀬川上流の足尾駅周辺では10月末から11月上旬、下流の大間々駅周辺では11月中旬から下旬が紅葉の見ごろといいます。

 なお、わたらせ渓谷鐵道の車窓では秋の紅葉のほか、春には菜の花や桜、花桃を楽しむことが可能。「ごうど」と読む途中の神戸駅(群馬県みどり市)は、花桃の名所です。

わ鐵の魅力「渡良瀬川のトロッコ列車」

 わたらせ渓谷鐵道には、そうした車窓をより満喫できる観光列車が、2種類も走っています。

 ひとつは「トロッコわっしー号」。窓ガラスを外したトロッコ風のディーゼルカーで、渡良瀬川の爽やかな川風を肌で感じながら、紅葉などの車窓を楽しむことができます。

 この「トロッコわっしー号」は冬季も走りますが、その際は窓にガラスを設置しての運転です。

 ちなみに「わっしー」は、わたらせ渓谷鐵道のキャラクター「わ鐵のわっしー」のこと。このキャラクターをモチーフに、「トロッコわっしー号」はデザインされています。

 もうひとつの車窓を満喫できる観光列車は、「トロッコわたらせ渓谷号」です。

 こちらも「トロッコわっしー号」と同様に窓ガラスのないトロッコ風の車両で、渡良瀬川の爽やかな川風を感じながら、紅葉などの車窓を楽しむことができます。

 「トロッコわたらせ渓谷号」は、機関車が客車を牽引するちょっと珍しいタイプの列車なのもポイントです。

 国鉄時代に製造されたDE10形ディーゼル機関車が、同じく国鉄時代に製造された窓ガラスありの12系客車、窓ガラスなしのトロッコ客車を牽引して走行。昔ながらのボックスシートが並ぶ12系客車に乗れば、国鉄時代っぽい列車旅を楽しむこともできます。

 また、「トロッコわたらせ渓谷号」のトロッコ車両は元国鉄ではなく、元京王電鉄の5000系電車を改造して誕生しました。この点も面白いところでしょう。

 なお、わたらせ渓谷鐵道のこれらトロッコ列車は、運転区間が少々異なることに注意が必要です。

 「トロッコわっしー号」は桐生駅と間藤駅のあいだ、全線を走りますが、「トロッコわたらせ渓谷号」は大間々駅(群馬県みどり市)と足尾駅(栃木県日光市)のあいだで運転されます。桐生駅、間藤駅での機関車付け替えが困難なためです。

わ鐵の魅力「なるか世界遺産!?」

 歴史的なことを考えても、わたらせ渓谷鐵道の魅力として「足尾銅山」は、欠かせないところでしょう。鉱毒事件など負の側面もありますが、それを含めて、日本近代化の生き証人です。そうした歴史的意義などから現在、「足尾銅山」の世界遺産登録も目指されています。

 わたらせ渓谷鐵道を使って、足尾銅山の歴史に触れることも容易です。

 実際の坑道を利用した見学施設「足尾銅山観光」が沿線にあり、わたらせ渓谷鐵道の通洞駅(栃木県日光市)から、徒歩5分ほどで到着することができます。

 終点の間藤駅では、その先にも注目。かつてはその先、足尾本山駅(栃木県日光市)まで2kmほど線路が延びており、その遺構が残っているからです。

 足尾本山駅は、足尾銅山で産出した銅を製錬した本山製錬所などがあった場所で、1987(昭和62)年まで貨物駅として営業していました。

 通洞駅、足尾駅、間藤駅の周辺にはこれ以外にも足尾銅山や、その経営に携わった古河財閥関連の見どころが点在しているため、散策してみるといいでしょう。鉄道ファンや廃墟ファンにはもちろん、負の側面を含めた日本の歴史を学ぶという意味でも、とても有意義な場所だと思います。

わ鐵の魅力「『乗り潰し』の聖地」

 わたらせ渓谷鐵道の終点、間藤駅。実は一部の鉄道ファンにとって、「聖地」扱いされています。

 国鉄全線を乗り潰した過程をえがき、1978(昭和53)年の「日本ノンフィクション賞」を受賞した『時刻表2万キロ』などで「鉄道紀行」を文学の一ジャンルにしたと評価され、菊池寛賞も受賞した故宮脇俊三氏(1926~2003)。

 氏が国鉄の全線を完乗した駅が足尾線――現在のわたらせ渓谷鐵道の、間藤駅だからです。『時刻表2万キロ』では「第13章 足尾線――最後の一線」として、そのとき(1977年)のことが綴られています。

 わたらせ渓谷鐵道の間藤駅では、氏に関する展示を実施。宮脇ファンにとって、ひとつの「聖地」になっています。

 余談ですが、私は小学生のころから宮脇ファン。日本の鉄道全線完乗を果たしたのは、同じ間藤駅でした。もちろん、意図的にですが。

わ鐵へのアクセス

 わたらせ渓谷鐵道へのアクセスは、鉄道では方法がいくつかあります。

 起点の桐生駅はJR両毛線と接続しており、そこから乗車するのもアリですが、東京方面からの直通列車は走っていません。

 わたらせ渓谷鐵道で桐生駅から2駅目の相老駅(群馬県桐生市)は、東武桐生線と接続。浅草駅(東京都台東区)発の特急「りょうもう」「リバティりょうもう」が停車するため、便利な場合もありそうです。

 特急「りょうもう」「リバティりょうもう」の終点である赤城駅(群馬県みどり市)で、わたらせ渓谷鐵道に乗り換えるのも面白いでしょう。

 赤城駅から、わたらせ渓谷鐵道の大間々駅までは約1km。大間々は江戸時代、足尾銅山に通じる「あかがね街道」の宿場だった場所で、商店街には歴史ある酒蔵、醤油蔵も存在。そうした空気を味わいながら乗り換えるのも、オススメです。

 また終点の間藤駅、足尾駅、通洞駅側では、山を越えてJR日光駅、東武日光駅へ向かう日光市営バスが運転されており、わたらせ渓谷鐵道を使った周遊ルートを楽しむこともできます。

掲載日:2024年10月11日

この記事の筆者

恵知仁

鉄道ライター、乗り物ライター。ウェブメディアを立ち上げ、初代編集長を約6年務めた経験と、乗り物全般の取材で得た知識を元に記事を制作。一児(子鉄)の父。ウェブサイト「おやこてつ」運営。
「おやこてつ」URL:https://oyakotetsu.info/

提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/

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