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A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「CGじゃないの?『はじまる観光計画』メインビジュアル制作の裏側」

A列車で行こう はじまる観光計画 Nintendo Switch 2 Edition
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コラム

A列車jp発「CGじゃないの?『はじまる観光計画』メインビジュアル制作の裏側」

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何気なく目にするゲームソフトのメインビジュアルビジュアルですが、
その裏には見えない苦労やこだわりがあったりします。

「はじまるA列車」ビジュアル制作工程

 2021年3月に発売された「A列車で行こう はじまる観光計画」。CG合成風なメインビジュアルに見えるが、実はプリントアウトされた紙で造ったジオラマを撮影していた……

 「A列車で行こう5」以来27年間デザインを担当している自称・四半世紀デザイナーが、ユーザーが知り得ないビジュアル制作の裏側を解説するシリーズも第三回目。今回は、「A列車で行こう はじまる観光計画」の切り絵工作のようなビジュアルがどのような工程ででき上がったのかを発想から提案、完成まで紹介する。

みなさんご存知「A列車で行こう はじまる観光計画」パッケージ。

 アートディンクの担当者から最初にオリエンがあったのは、2019年の秋頃。社外秘A4のコピー用紙数枚、次なる「A列車」のタイトルの話を聞かされる。既に5年前の話。メールのやりとりや残っている画像データから記憶を蘇らせながら解説スタート!

今まで使ってこなかったゲーム画面を使用!?

 企画書の画面を見て一番に感じたこと。電車や街並みの画像がグレードアップされている!これまでの任天堂A列車シリーズのメインビジュアルはジオラマなどゲームとは切り離したビジュアルだった。しかし、今回ならゲーム画面のキャプチャを使えるのではないかと、すぐに思いついた。ゲーム画面を活用した方が、ゲームの魅力を一番手っ取り早く伝えられるからだ。

 打ち合わせはサクサク進み、ゲーム内の電車や建物をビジュアルの素材として使うことになった。それらを踏まえて初回のラフ案を提出へ。

 (ただ、大人の事情でラフ案の写真をそのままお見せすることはできないため、モザイクをいれている。絵柄については解説を踏まえて想像してほしい。)

ゲーム画面を合成したリアルな街並み案

 ひとつめの案はゲーム画面上にベストな街並みを作り、それらをメインビジュアルとして加工する方法。デザイナーがイラストレーターに絵を依頼しディレクションする方法と同じやり方だ。

イメージとして提出した「街並み」レイアウト。

 街並みやビル、電車、車をこちらでレイアウトして、その画像を元にゲーム画面でリアルな街に近づける案なのだが……

ゲーム画面を組み合わせたレイアウト用ラフ案。

 そう都合のいい画面がゲームでつくれるわけはない。実は提案前から、ビジュアルへの指示、デレクションを細部まで反映させるのは、難しいとわかっていた。

 これはないな(心の声)……そのため、別案も用意した。

画面を切り抜いて3D立体に!立版古案

 「立版古(たてばんこ)」、聞き慣れない言葉だろう。
半世紀デザイナーが小学生の頃、雑誌に同封されていた付録を思い出す。

 ビルや電車、各パーツを切り抜いて配置し、街並みを作る。こちらの案ならば、レイアウトを自由に調整できるし、手作り感覚でゲーム画面を構成できる。

2D平面を切り抜いて立体3Dにする。

 提案前からこれで決まるな!と、思っていた。その通りになる。

 方向性は決まったが、まだゲームが開発途中でビジュアルの制作はできないので一旦作業はストップ。そのため、先行して進めていた「A列車で行こう はじまる観光計画」ロゴを納品する。

「A列車で行こう はじまる観光計画」ロゴ。

さてレイアウトをどうするか?

 年明け、担当者から連絡が入る。ゲーム画面ができてきたので作業を再開することに。画像はアートディンクが組んだビル群ラフとパッケージイメージ。

 ここまでクライアントに組まれると、デザイナーとしてこれ以上の仕上がりにしないといけないプレッシャーがかかるのが本音である。しかしイメージを共有して安心して前に進めるのも確か。

 「A列車」のメインはもちろん電車。ビルや建物が多すぎては電車が埋もれてしまう。電車と街並みからイメージを膨らませてみる。

 函館のチンチン電車?
 カリフォルニアだっけ?
 あの坂道に電車が走っている場所……

 すかさず携帯でググってみる。
 あ!これ、これ サンフランシスコの街並み!

 これに湘南のように、電車を横切らせたらどうだろう!

 2回目の打ち合わせはここまで。

 湘南のアイディアが出た時点で、すでに半世紀デザイナーの頭の中のビジュアルはでき上がった。本日の打ち合わせをふまえたラフを後日提出することに。

 こちらが、サンフランシスコと湘南踏切をミックスさせたイメージ案。あくまでもラフ、車やビルの素材はネット上で集めたもの。

提出したラフ案。完成に近いイメージになっている。

 ふふふふ。この時点で完成の8割方見えた!もうビジュアルのアイディアは考えなくていいぞ!あとは思いのまま街をつくるだけ、子供の絵のように、ただただ描き進めればよいだけだ。

クライアント側の調整で仕上がりがくっきりと!

 同時にアートディンクの方でも街並みがパソコン上で組まれ、実際どのような画になるのかなど、全体のバランスを調整していたらしい。

パソコン上で組まれたレイアウト。

 立版古案で決まらなければこのイメージの展開で進んでいたかもしれない。

アートディンク担当者がダミーとして制作した、立版古の街並み。グラフィックはまだ制作途中。

 プリントアウトで組まれた街並みも作られていて、双方のイメージは共有できていると認識できた。あとは配置画像の提供待ちとなる。

いよいよ本制作スタート!

 冬が終わり春がきた。アートディンクから本制作用のゲーム画像が送られてきた。
ビルや電車、建物のディテールがなんだかとても懐かしく、なんといっても楽しい。子供の頃の記憶、キャラメルのおまけ、グリコのオモチャ感覚。

アートディンクから支給されたゲーム内のビジュアル。どの素材もワクワクする。

 これはいけると!と確信する!

童心に還る絵作り。

 小さい頃から車や戦車、そして絵を描くことが好きだった。兄よりもおもちゃが少なかったせいか、もっぱらチラシの裏面に絵を描いていた。勉強はできなかったが図工は得意だった。

 アートディンクからの画像は、その頃を思い出させてくれた。

 ゲームに登場する電車や車をパソコンに並べて、プリントアウトし、5mm程のボードに貼って切り抜く。あくまでランダムに切り抜く、アナログ感を出したいので几帳面は駄目。フチを残すことで、手作業感を出す。

 この裏に爪楊枝をとりつけて、ステージに配置する。自分だけの都市を造るのだ!僕は僕なりの方法で、自分の街に電車を走らせるのだ!

メインとなる電車。何度かの差し替えがあった。
奥行きと坂道を表現するため、アーチ状にしたステージ

 次にステージを制作。遠方はビルの実写の写真を貼り込む。道路が斜めに歪んでいるのは遠近感を出すため。この角度が決まるまで何度も試行錯誤を繰り返した。

社殿がセンターに見えるよう鳥居の位置も何度も調整。

 切り抜いた配置物を街並みに配置していく。レイアウトを決めるため、抜き差しを繰り返した爪楊枝の跡が見える。

溢れるほどの車を配置していたが、全体のバランスをみて選定。

 車やビルのサイズを変えて奥行きをだす。そのため、何度もプリントアウトを繰り返す。

 料理でもそうだが、素材を用意するのが一番手間がかかる。素材さえ用意できれば、あとは炒める(レイアウト)するだけだ。一番楽しいレイアウト。もう少しの辛抱。

 あーめんどくさい!本音が出てしまったが、悪態をつくほどに仕上がりの精度が上がっていくのがわかる。

ステージに配置された街並みを撮影する

窓際にジオラマを置いて自然光の中での撮影。そのため、作業は日中のみ。夜は素材制作にあてた

 ファインダーを覗き込み、電車やビルの配置を調整し、全体のレイアウトを決めていく。捨て線を引いてデッサンをするようなもの。

 撮影されたレイアウトが最終的なビジュアルとなるため、気を抜けない作業。

ファインダーから見た初期画面。
トリミングの確認用にパッケージに入れ込んだ途中段階のラフ。

 より完成イメージを想起させるためのダミーパッケージも作成。この時点ではまだ前回制作のロゴ「A列車で行こうEXP+」がアタリで入っている。

レタッチ前の最終的なビジュアル

 縦長のパッケージだけでなく、雑誌広告、鉄道博物館の電飾看板などにも使うため、急遽横長のレイアウトに変更。左右に素材を追加し、大掛かりなステージとなった。レイアウトの配置はこれで完成。特に東京タワーのサイズは何度もやり直した。この後撮影をして、パソコン上で飛行機を吊るしている針金や遠方のビルや海、空のセロテープの跡に調整をいれる。

素材を配置している写真。

 終始、アナログ的な制作であったが、結果CG合成のような仕上がりになってしまった。このままでは勘違いされそうだったため、手作り感のヒントを製品パッケージ用紙の裏に入れることにした。

「自分だけの街をつくる」細部に宿る手触り感、完成。

完成した、「A列車で行こう はじまる観光計画」ビジュアル。

 ゲームはCG画面なのに、なぜわざわざ手間暇かかるアナログにするんだ?
だったらそのままCGで作った方が早いだろうに!との声も聞かれるが、あくまでアナログにこだわったのは、「ものづくり感」「手触り感」が、A列車で行こうの遊びの肝であり「街づくり」に通ずるから。だからこんなに面倒くさいことをしてまで、あえてアナログ制作にこだわったのだ。

 ああ、楽しかった!

 2019年の秋から始まった、アートディンクからのおもちゃ(制作)は四半世紀デザイナーを童心に還し、楽しいものだった。遊びごころあるビジュアルになったと思う。

Nintendo Switch / Windows (Steam)

 

掲載日:2025年8月29日

この記事の筆者

稀人(古村太)

北海道出身。1985年よりグラフィックデザイナーとし活動開始。1995年よりフリーのデザイナー、個展や公募展参加。現在、創作デザインを継承したアトリエ兼、古道具店「MAREBITO」を展開中。

提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/

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