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ギャラリーやイベントでA列車をとことん楽しみましょう
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A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「祝15周年 ライターが実名告白、再現系紹介記事『A列車紀行』の裏側」
こんにちは。ライターの杉山です。ご縁がありまして、A列車で行こうシリーズのガイドブックやらWebニュースの記事をたくさん書いておりました。その中でも特に印象深い記事が2017年に「乗りものニュース」で連載した「A列車紀行」でした。すごく、すんごく、すんんんんっごく手間がかかったけど(笑)、作っていて、とても楽しい記事でした。
この記事を作るきっかけは……なんだっけ(笑)。もう8年前ですしねぇ。たしか、プロデューサーのキヨミチさんから相談されました。最初の打ち合わせでは2017年7月でした。
「A列車で行こう9がいまも売れ続けていて、年末商戦向けに告知したい」
そして、
「まだ内緒だけど、PlayStation4版も出す予定だから、相乗効果も期待して」
という話でした。
『A列車で行こう9』については新作ゲームレビューという時期ではないし、いまどきメディアで攻略記事もなあ、という流れの中で「実際の風景を再現してみるってのはどうでしょうね」という話になりました。
『A列車で行こう9』が発売されてから、実際の土地を再現したマップを作るユーザーさんが次々に現れていました。「山手線再現マップ」には感心しました。私も「品川駅再現マップ」を作って遊んでいました。2015年に作った「A列車で行こう9 Version4.0対応 公式マスターズガイド A列車で行こう9 公式ガイドブック」の表紙は函館の夜景です。本を閉じた状態だとただの夜景に見えますが、裏表紙に回り込んでいて、開くとポスターや旅行雑誌で有名な風景になります。
再現マップで誰もが知っている風景を作り、その写真がSNSなどに表示されたら、「この景色知ってる!! ナニコレ!!」って思うでしょう。『A列車で行こう9』を知らない人に記事を見てもらいたい。そういうマップを作りましょう。こういう経緯で、アートディンクと「乗りものニュース」の広告企画として「A列車紀行」が始まりました。
全6回で、最初の候補地は「大井川鉄道」「函館」「広島 厳島神社」「京都 天橋立 京都タンゴ鉄道」「肥薩線 ループ スイッチバック」「指宿枕崎線 開聞岳」でした。観光色が強く、鉄道趣味的にもマニアックなところです。ここから吟味して「誰もがひと目でわかるところ」「A列車で行こうの車両や建物が使えるところ」などを勘案して「鎌倉」「熊本」「出雲」「梅田」「函館」「金沢」になりました。
実はこの時『A列車紀行パッケージ』販売というアイデアもありました。前出のご当地マップを1本、マップで紹介する車両とランドマークのみ、という機能限定版を3,000円くらいで販売しよう。鉄道会社の売店で売ってもらおう。買った人が気に入ってくれたら、フルパッケージ版を買ってもらおう。そのための割引クーポンも入れておこう。みたいな。
この企画は実現しませんでしたけれども、後に「A列車紀行」に合わせた形で車両と建物が『A列車で行こう9 Version5.0』に追加されました。A列車紀行マップも『A列車で行こう9 Version5.0』から収録されています。各マップの裏話を紹介します。
『A列車で行こう9』を旅する 鎌倉編:江ノ電と小田急藤沢駅を再現してみた | 乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/78768/
連載第1回の風景は江ノ電です。鎌倉高校前の踏切から江の島を望む景色を再現しました。いまは踏切の方がアニメ「スラムダンク」の聖地として有名ですね。当サイトの恵知仁さんのコラム『A列車jp発「お出かけ、江ノ島電鉄」』に実際の写真があります。似ているでしょう? 当時は江ノ電の車両が収録されていなかったので、東急世田谷線の300系電車を置いています。
第1回なので、再現過程を詳しく紹介しています。『A列車で行こう9』のマップは最大で10km×10kmです。これはJRや大手私鉄の通勤車両の長さが20mで、1:1モードの場合はメッシュ表示の2マスが1両ぶんの長さ、つまり1マスの辺は10mとして換算しています。
Switch版『A列車で行こう はじまる観光計画』『A列車で行こう ひろがる観光ライン』のマップづくりについては、当サイトの枝久保達也さんのコラムで紹介されています。
私も枝久保さんも、電子地図は国土地理院を引用しています。これはキャプチャー画像を転載するルールが明記されているからです。実際のマップ作りについて、私はGoogleMapのほうが使いやすいと思います。記事で紹介しない再現マップはGoogleMapを使っています。
マップを作ってみると、風景の再現は簡単でした。とくに上手くいったところは、江ノ電の腰越付近の路面区間です。ここは線路の両側を「もんじゃストリート」で挟んで再現しました。路面電車の軌道がないので再現が難しいところ、これは「うまくいったなあ」と思いました。全6回の中で気に入っている風景のひとつです。
しかし、撮影してみると、遠景に建物がないことが気になりました。そこで、10km×10kmのすべての範囲で線路や駅を配置しました。とくに住宅や田畑は広範囲で、マップを埋め尽くす手間が大変でした。「範囲設定」で密集した建物群を作り、ひたすら埋めていく作業でした。そのため、記事で紹介した風景以外の建物は不正確です。リアルに近づけるため、建て替えて楽しんでいただければ幸いです。ゲームに収録するマップは完成してはいけないのです。遊ぶ余地を残さないと(言い訳)。
江ノ電はアートディンクのデバッガーさんからツッコミが入りました。実際の江ノ電は単線で、運行本数を最大にするために、ほぼ等間隔に行き違い設備を作っています。ゲームでも配置を再現して「12分ダイヤを再現」と書きました。しかし「実物のような12分メッシュダイヤが再現できません」と。それは仕方ない。メッシュダイヤは駅の配置だけではなく、車両の加速度や時間の進み方も関係しています。列車ダイヤはあらゆる条件を調和させたオーケストラなのです。今回は風景の再現だけなのでご容赦を……。
『A列車で行こう9』を旅する 熊本編:お城と路面電車と観光列車と新幹線と! | 乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/78996
熊本を選んだ理由は、すでにJR九州の観光列車「A列車で行こう」が収録されていたことと、2016年に発生した熊本地震からの復興を祈念したからでした。ただし、復興をテーマとしたマップにはしませんでした。再現範囲は悩みましたが、熊本電鉄の全線を収録するとうまくおさまりました。ほかに、九州新幹線の車両があり、建物データにお城もあります。良い条件がそろっていると思いました。
私が熊本を旅したとき、メインストリートに市電が走り、それを見守るようにお城がそびえ立っている景色の印象がありました。実際に「SL人吉」に乗ったとき、熊本駅到着直前に「あそぼーい!」がやってきて、しばらく並んで走りました。「あそぼーい!」の子どもたちが、こちらのSLに手を振っています。楽しそうな表情まで見えました。JR九州は粋なダイヤを作ったものだなあと感心しました。SL人吉は引退しましたから、もう見られない風景ですね。
熊本駅は切り欠きプラットホームなどの再現で苦労しました。上熊本駅は熊本市電と車庫の配置に苦労した記憶があります。ダイヤを組むのが大変だなあと(笑)。しかし、熊本市電の延伸や、御代志駅のバスターミナル設置、上熊本駅で路面電車と熊本電鉄の相互直通運転を実現するなど、遊び甲斐があるマップになったと思います。熊本駅と上熊本駅の再現に集中したため、ほかの地域は建物がありません。遊ぶ余地を大きく取っております(笑)。
『A列車で行こう9』を旅する 出雲編:旧国鉄大社線、復活のシナリオを作る! | 乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/79196
出雲編を選んだ理由は『A列車で行こう9』にサンライズエクスプレスこと285系電車が収録されているからです。鉄道ファンにも知名度があり、とくに女性向け雑誌などでは「夜行列車で女子会、縁結びの神社に行こう」という記事が定番となっていた気がします。出雲市からは一畑電鉄も発着しますし、この電車は出雲大社のすぐ近くまで行きます。
しかしマップを作ってみると意外にも地味でした。見どころは出雲大社前駅から出雲大社を眺めるあたり。出雲市駅周辺も実際は閑散としています。建物が少ないところはマップ作りの上でありがたいことです。建物が少ないことを逆手に取れば、新路線を作って町を発展させるという、「A列車で行こう」シリーズ本来の遊び方ができるわけです。
出雲市駅から出雲大社までの道路と、一畑電鉄の沿線は建物を配置しました。しかし、ゲーム開始直後から建物が減っていきます。列車の運行本数が少なすぎて、鉄道の発展力が弱いのです。これは広範囲に建物を密集させた「鎌倉」マップでも起きた現象です。人口が減る一方なので、マップ外からの観光客に期待します。なんだか実際のローカル線と地方都市に似てきます。
山陰本線も一畑電鉄も単線ですから、列車の増発は厳しい。このままダイヤを工夫して列車の運行を増やすか、借金して複線化するか。そんな判断が必要です。実際の鉄道であれば、公共交通の整備に補助金が出ますけれど、そんな機能は『A列車でいこう9』にはありません(笑)。
もうひとつの要素として、「廃線」を組み込みました。かつて出雲市駅から大社駅まで結んでいた国鉄大社線です。町を発展させて余裕ができたら是非復活してください。電化してサンライズを走らせましょう。
『A列車で行こうExp.』を旅する 阪急編:伊丹空港へ延伸せよ! | 乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/79442
リード文では「PS4版『A列車で行こうExp.』で遊び始めてしまいました。なぜなら、あの電車を走らせたかったから!」なんて書いてありますが、実際はアートディンクの担当者様から「次回から『A列車で行こうExp.(エクスプレス)』で作ってください」、「えっ、ぜんぶ『A列車で行こう9』で作るはずでは?」というやりとりがありまして(笑)。
「でもワタシ、PlayStation4を持っていないんです」と言ったら、なんと機材一式が送られてきました。あわてて机を片付けます。マップエディタをコントローラーで操作するなんて……と思ったら、PlayStation4はUSB端子が付いていて、PC用のマウスが使えました。よかった。
いつか『A列車で行こうExp.』で遊びたかったのも事実。テレビの大画面で車窓モードを眺めたい。収録車両も増えていて、阪急電鉄の神戸本線、宝塚本線、京都本線の電車があります。ならば作るしかないですよね。梅田大ターミナルですよ。隣接するJR大阪駅もよく似た駅舎があります。
しかし、梅田駅周辺だけなら10km×10kmも要らないですよね。どんな範囲がいいかなと地図を測量(笑)していくと、なんと、大阪国際空港(伊丹空港)がギリギリ入ります。阪急電鉄は伊丹空港へ支線を建設する構想があります。これはゲームプレイの目標になると思いました。梅田駅と伊丹空港って、こんなに近かったんですね。だから新大阪駅の真上を飛行機が飛んでいくわけですね。ちなみに東京だと、羽田空港内の各駅と品川駅がなんとか10km×10kmに入ります。建設中のJR東日本の羽田空港アクセス線や、京急電鉄空港線を再現してダイヤを組んでみたいです。
さて、空港といえば『A列車で行こう9』の「空港が小さすぎる問題」です。これはゲームを成り立たせるための苦肉の策でしょうね。大型旅客機の滑走路は約2kmですから、ゲームで再現すると、滑走路2本の空港はマップ面積の10%~15%になってしまいます。建物の高さ制限区域も広くなります。しかし、ここはあえて実物サイズの空港にチャレンジしました。ゲームの「国際空港」はターミナルビルとエプロンとし、道路と資材置き場で滑走路と誘導路を再現しました。
このくらいだったら、このサイズの空港を建物に追加してくれても良いような。次のバージョンでマップサイズを広くしていただいて……(笑)。
『A列車で行こうExp.』を旅する 函館編:日本三大夜景も漁り火も再現! | 乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/79676
前述のように、函館の夜景は「A列車で行こう9 Version4.0対応 公式マスターズガイド A列車で行こう9 公式ガイドブック」の表紙用に作ってあります。だから今回はラクだと思ったら、『A列車で行こう9』と『A列車で行こうExp.』のマップデータは互換性がないそうです。つまり始めから作り直し……。それを最初に聞いていれば、函館編を最初に書いたのに……。ちなみに『A列車で行こう はじまる観光計画』『A列車で行こう ひろがる観光ライン』のマップデータもPC版とSwitch版で互換性はありません。Switch版のユーザーマップのなかに、PCで遊びたい作品があるんだけどなあ。
作り直しと言っても、すでに地図の調査は終っていますから、『A列車で行こう9』と『A列車で行こうExp.』を同時に起動し、2つの画面を並べて作っていきます。このマップの重要ポイントは「函館山からの夜景」なので、実際の夜景の写真も参考にして、もっとリアルなマップを目指しました。
まずは函館山の高さ。写真と同じアングルにするための山の高さを決めます。写真をよくみると、全域が同じ明るさではありません。繁華街と工業地域、住宅地で明るさが異なります。道路は路面電車の軌道を挟んで作り、その道路を基準にして建物のエリアを決めました。
『A列車で行こうExp.』は五稜郭風のランドマークが追加されたので、さっそく使います。函館湾に沿って「道南いさりび鉄道」が走っています。いさりびは漁船が魚やイカを集める投光器の灯りです。船は自由に配置できないため、小さな島を作って建物を置いて再現しました。
ゲームの目標として「函館駅に北海道新幹線を乗り入れる」があります。当初は新函館北斗駅からフル規格新幹線を建設する構想でした。ゲーム画面でも再現しましたけれど、これは建設費が大きすぎるとして立ち消えとなりました。そのかわり、新函館北斗から函館本線に乗り入れる形で函館駅に至る構想が検討されており、大泉市長の選挙公約でもありました。こちらを再現してもおもしろいと思います。
『A列車で行こうExp.』を旅する 金沢編:新幹線と北鉄が競演 駅の「門」再現も! | 乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/79904
2015年に北陸新幹線が金沢まで延伸開業しました。東京から金沢まで乗り換えなし、所要時間は約2時間半になりました。この記事は金沢延伸開業から3年経っていますが、金沢市はすっかりビジネスや観光の目的地として定着していました。『A列車で行こうExp.』は、北陸新幹線E7系/W7系や、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道の車両もあります。ランドマークとして金沢駅のシンボル「鼓門」をイメージした建物「能楽門」もあります。というわけで、連載の最終回は金沢編になりました。
マップの再現範囲は金沢駅を中央からやや南東とし、北西に海を配置して、北陸鉄道浅野川線を全線再現しました。最近になって赤字を理由に存廃問題が取り沙汰されましたが、2023年に沿線自治体の支援により鉄道存続が決まりました。また、金沢市は金沢港~金沢駅~香林坊~野町~有松を結ぶ新交通システムを検討中です。BRTまたはLRTになるようです。その新しいルートをゲームで先に実現してもおもしろいと思います。
マップに建物を敷き詰めたため、ゲーム開始当初は鉄道の勢いがなく、建物がどんどん消えます。しかし旧北陸本線の「IRいしかわ鉄道線」は全線複線で、列車の増発は容易です。北陸新幹線も開通しており、列車を増発すれば町の勢いを取り戻せるでしょう。兼六園や、実際にはない金沢城も復原(笑)しています。実際の構想にこだわらず、観光やビジネスで発展させてください。
北陸新幹線の駅は実際には屋根で覆われています。このマップを作ったときは既存のプラットホームを使っていますが、バージョンアップキットで「高架駅(屋根付き)」が追加されました。『A列車で行こう9 Version 5.0 FINAL EDITION』にはA列車紀行とマップとともに収録されています。「高架駅(屋根付き)」に建て替えた方がリアルな風景になると思います。
この連載企画はたいへん好評で、『A列車で行こう9』『A列車で行こうExp.』の新規ユーザー獲得に貢献できたようです。このマップを遊びたいという声も多く、その期待に応えるため、『A列車で行こう9 Version 5.0 FINAL EDITION』『A列車で行こうExp.』の両方とも全マップを収録することになりました。それはつまり、『A列車で行こうExp.』に「熊本」「鎌倉」「出雲」マップを作り、『A列車で行こう9』に「梅田」「金沢」を作るということです。データの互換性はないので、すべてイチから作り直しだと思いました。
じつはこのあたりの記憶が私にはありません。きっと、ずっと前に助けた鶴がこっそりやってきて、私が寝ている間に作ってくれたんだと思います。あるいは、ふだん見て見ぬフリをしていた屋根裏のコビトたちが、私が寝ている間にトンテンカントンテンカンと……「ほら、靴ができたよ!」「いや靴はいらねぇから!」みたいな。
(編集部注:おとぎの国で夢うつつな杉山さんはもう休ませようということになり、最後はこっちでトンテンカンしました。杉山さん、コビトたちはアートディンクにいましたよ!)
冗談はともかく、すべての再現マップは完成されていません。その先に遊ぶ隙間を残してあります。ぜひ遊んでみてください。そしてモチーフとなった町に興味を持ったら、ぜひ旅に出ましょう。実際の風景を見ると、もっとマップを作り込みたくなると思います。
A列車で行こう9 Version5.0 コンプリートパックDX+
Windows (Steam)
掲載日:2025年8月8日
提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/)