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コラム

A列車jp発「こだわりマップの作り方(後編)」

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A列車をプレイしていれば、一度は作りたい実在都市の再現マップ。
二回に分けて「はじまるA列車」で再現マップづくりのコツをじっくりご紹介。
後編では、「こだわり」を忍ばせるマップの作り込みに迫ります。

地形の作成

 さていよいよ作成に入りましょう。マップ全てに手を入れるので何もないまっさらな状態で始めます。特に注意が必要なのは、石炭、石油の埋蔵を「なし」にすることです。「あり」だと周辺マスの土地造成ができないため、非常に手間がかかります。

 筆者は画像1のように、全マスの高さを1段階上げ、Lサイズマップ320マスを80マスごとに分割(16分割)する目印を付けたテンプレートファイルを作成し、毎回これを使ってマップを作成しています(データを公開しましたのでよろしければ活用してください。Switch版テンプレートコード:55V83H5)。

画像1

 なぜ全マスの高さを上げるかというと、表現の幅が格段に広がるからです。筆者が特にこだわるのが河川です。ほとんどの都市には河川があるので、内陸部の平坦なマップでも、河川をしっかり描写するだけでグッとリアルになります。

 コンストラクションモードには「河川」のタイルがありますが、用水路であればともかく、通常の河川の表現としては迫力不足です。「湖」のタイルを成形して川を表現することもできますが、線路や道路は同じ高さで湖と交差できないため、いちいち立体交差にしなければなりません。

 そこで高さを1段階上げたマップの出番です。通常の地形では地面を1段階下げると海になってしまいますが、高さを上げることで、地面のまま段差が作れるので、ここに湖タイルを使って幅のある川を作るのです。

 通常の河川は縦横の方向にしか作れず、線路や道路とも直角にしか交差できません。しかしこの方法であれば斜めの川を作ることができ、線路と斜めに交差できます。また幅を変えることで様々な規模の河川を表現可能で中州も再現できます。

 さて、下準備で作成した16分割の設計図をもとに、海や河川などの水回りと、山岳や丘などの起伏から作っていきます。河川は前述の通りですが、起伏の作り方はもう少し複雑です。

 コンストラクションモードの土地造成には「盛る」「削る」「平ら」の3つのメニューがあります。リアルな山を作るのであれば、山頂からふもとまで滑らかな斜面にしたいところですが、「盛る」を使って複雑な形状にするのはひと手間です。

 ここは妥協しましょう。山地は最終的に木を敷き詰めるので、細かい形状は見えません。等高線で輪切りにして積み上げた山岳立体模型のように、「平ら」で1段階ずつ重ねて「山」を作ります。なおマップの1段辺りの高さは明示されていませんが、タワーや高層ビルの高さから推定すると20m程度でしょうか。

 各地点の標高は地図の等高線から把握できますが、前編で紹介した地理院地図は画面中心部の標高を表示してくれます。確認すると福井マップの範囲内には、標高600~700mの山が存在しているため、最大で30段以上が必要な計算です。

 ご存じの通り高さは22段階なので再現は不可能です。そのため筆者は、マップ内の山は標高にかかわらず6~7段程度に収めています。山地は基本的にプレイに使わないので、ここに労力を割く必要はないと考えています。

配置シミュレーション

 河川と山地の次は線路や道路、施設の配置をシミュレーションします。まだ実際に配置してはいけません。設計図を参照しながら、線路と道路予定地に「荒地」タイルで線を引き、駅は「砂浜」など別のタイルを使って目印を付けます。大型施設のスペースが確保できているかもチェックします。

 しかし実際にマップに配置してみると、予想通りに収まらないものです。必要なマス数を確保するため、レイアウトや地形の変更が必要になりますが、畑や一般住宅など一部を除き、物件があると土地造成ができません。道路と線路の撤去は別メニューを開く必要があり、線路や駅はさらに土地を売却する必要があるからです。特に新幹線や空港、貿易港は一度設置すると撤去できないので、スペースだけ確保、確認しておいて、最後の最後に設置します。

 今回の福井マップは「お仕事」ということもあり、福井駅周辺の配置について1マス単位で詳細なシミュレーションを行いました。試行錯誤するのも楽しみのひとつなので通常はここまでやりませんが、下準備に時間をかければゲーム上で配置するだけで済みます。

画像4

 さて、シミュレーションが終わったら、いよいよ施設の配置に着手しますが、線路と道路の配置はまだ行いません。前述のように線路と道路の撤去は手間がかかるので、まず設計図をもとに施設を配置します。(画像4)

 地図記号ではどのような形状、色の建物なのかは分からないため、Google Mapなどオンライン地図サービスの航空写真を活用します。デスクトップ版のGoogle Mapは航空写真を3D化して見ることができるため、建物の高さも直感的に把握できます。

 手間をかければ過去の街の再現も可能です。札幌マップは、1969年の街並みと同年に廃止された定山渓鉄道を再現しましたが、参考にしたのが時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」です。

今昔マップ on the web(©谷謙二)

 札幌周辺は1950年代前半と1970年代中盤の地図、1960年代前半と1970年代後半の航空写真が収録されており、これらを組み合わせながら当時の街並みを一つひとつ調べていきました。また定山渓鉄道の写真集や、公式の社史である『株式会社じょうてつ100年史』を購入し、終点・定山渓温泉駅周辺の建物の配置や、都心側のターミナルだった東札幌駅、豊平駅の構造、沿線で進むニュータウン開発の様子を再現しました。

神は細部に宿る

 話は戻り福井マップです。大型施設をある程度配置したら、いよいよ線路と道路を敷設していきます。効率だけで言えば線路と道路は最後に敷設するべきですが、やはりイメージがわきにくいので、この辺りで敷設します。道路は二車線道路、道路、街路を使い分け、メリハリをつけます。

 地形、鉄道、道路、重要施設といった大枠ができたら、あとは細部の作り込みです。まずは主要駅の周辺から着手し、続いてニュータウンや団地、工場など面積の大きい部分を作成します。

 航空写真をじっくり見ると、色々なことに気づきます。例えば住宅地にはところどころ空地があり、必ずしもギッシリと家が建っているわけではありません。普通の住宅地は個別編集の「ランダム」で配置したような街並みですが、ニュータウンは建物のサイズや種類が揃っており、ひとつずつ建物を配置すると再現度が高まります。また集合住宅には必ず駐車場が併設されることも忘れてはなりません。

 田畑は航空写真では何を作っているのか分かりにくいので、地図記号を参考に、水田と畑、果樹園を使い分けます。ビニールハウスの設置状況は写真で把握します。今回の福井はコメどころらしく広大な水田と用水路が特徴なので、「河川」タイルに「舗装」加工して用水路を再現しました。ただし「河川」タイルは線路敷設の制約となり、ユーザーのストレスにつながります。今回は再現を優先しましたが、シナリオ付のマップであれば盛り込まないと言う選択もあるでしょう。要は目的によってマップの作り方は変わるのです。

 作り込みで重要なのが路線バスです。道路の位置関係が明確になっていれば、すんなりとバスの再現が可能です。バスの走行経路は「バスマップ」「バスルート」などのサイトや、スマホ版Google Mapでバス停をタップすれば確認可能です。

 全てのバス停を再現はできないので、街並みを見ながら絞り込んでいきますが、その過程で鉄道駅中心では見えなかった人の流れが見えてきます。小さなビル、古びた団地、個人商店、そんな小さな街並みをひとつひとつ反映し、納得がいかなければ道路を引き直し、地形を変えることもあります。こうした細かい積み重ねがマップの説得力を上げる秘訣です。

 ただ福井駅西口のように再開発が進行中の都市では、地図と航空写真に最新情報が反映されていません。その場合は自治体や再開発組合が公開するイメージパースや、建設過程をレポートする個人ブログの写真などを参考にしましょう。

ダイヤにこだわる

 街が形になってきたら早く列車を走らせたくなります。今回の福井マップ作成で最大の問題だったのが車両です。一般形通勤電車が走る併用軌道は違和感がありすぎるので、どのように再現するか悩んでいたのですが、「ひろがるライン」の新要素「ライセンス車両」を使うことにしました。

 従来型車両は鉄道ながら併用軌道を走る「江ノ電300形」、LRV(超低床車両)は窓が大きくシンボル性の高い「小田急箱根3000形・3100形」をお借りし、遠目にはそれっぽくなりました。次回作ではぜひ、宇都宮ライトレール開業で注目が集まるLRTの要素を入れてほしいですね。

 マップ作成の画竜点睛がダイヤ設定です。福武線は単線区間、急行運転、ヒゲ線の運行、えちぜん鉄道への直通運転など制約が多いため、しっかりとしたダイヤを設定する必要があります。ダイヤ編成の手法は省きますが、筆者は「OuDia」というフリーソフトを使用して組んでいます。

 このソフトは駅間距離と所要時間を設定すると自動でダイヤグラムを表示してくれます。福井マップ内の福武線の交換可能駅は「江端」「浅水」「三十八社」「神明」の4駅なので、このいずれかの駅で行き違いする必要があります。あまりに長い交換待ちは美しくないので、可能な限り数分の停車で済むようにしています。

 丁寧に入力すれば、ソフト上で作成したダイヤをゲーム上で打ち込むだけで問題なく動きますが、列車によって所要時間に誤差が生じることもあるので、実際に動かしながら修正を繰り返します。

 筆者はダイヤを組む際は、車庫を設置し、ちゃんと入出庫させるというこだわりがあります。ただ福井マップでは、えちぜん鉄道の車庫は福井駅付近にあるものの、福井鉄道の車庫はマップ外の北府駅にあります。そこでやむなく、線路の形状が北府に似ており、駅周辺に田畑の広がる三十八社駅に車庫を建設させてもらいました。ゲームなので楽しさを優先するのが正解です。

 完成した福井マップを見ていきましょう。まずは北陸新幹線が開業した福井駅です。本作は「E/W7系」車両を収録しているのでピッタリですね。西側には新幹線建設とあわせて高架化されたえちぜん鉄道の福井駅があり、「MC6101形」車両が停車中です。

 福井駅東口北地区では大規模な再開発が行われており、2024年に「FUKUMACHI BLOCK」として開業しました。また南地区でも2029年頃の完成に向けて再開発事業が動き出しており、こちらは一足早く再現しました。いずれもビルの形状はやや異なりますが、実物の存在感は表現できたかと思います。

 見どころは何といっても併用軌道区間と福井城址大名町駅付近から分岐する「ヒゲ線」です。画像では福井駅に向かう列車、駅前を経由せず武生方面に向かう急行列車、田原町方面に向かう列車が複雑に絡み合います。車両に対して線路タイルの幅が広すぎるため不自然さは否めませんが、制約の中でも併用軌道らしさが出たのではないでしょうか。借りてきた車両も遠目で見る分にはいい感じです。

 ヒゲ線の福井駅前駅はロータリー横にあります。福井市内の主要路線のほとんどが発着する西口ロータリーには、京福バスが運行するコミュニティバス「すまいる」を再現して配置しました。駅を中心に東西南北4系統の路線も再現しています。

 地方部は地形を生かした風景を再現しました。画像は一乗谷~越前高田間の越備北線(九頭竜線)が、国道158号バイパスをくぐりつつ、足羽川沿いを縫うように走る様子です。車両はキハ120系です。細かい形状は異なりますが、塗装(帯)を再現すれば、それなりに見栄えします。

 他にもマップ各地に細かい見どころをちりばめました。単線の制約の中で組んだダイヤや、駅を中心に広がるバス網もぜひ見ていただきたいところです。シナリオデータをアップロードしましたので、Switch版ユーザーの方はよろしければご覧ください。(Switch版シナリオコード:2RJWJPH)ぜひ地元の方の反応を聞いてみたいですね。

 アートディンク公式サイトの記事ですが、「正解」を示したわけではありません。ひとつの考え方として、自分ならこうする、こんなやり方もあるなど、コミュニティの盛り上がりにつながれば、いちユーザーとしてもうれしい限りです。

(筆者撮影)

掲載日:2025年3月7日

この記事の筆者

枝久保達也

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。現在は鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行なうかたわら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』で第47回交通図書賞歴史部門受賞。

提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/

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