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A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「つくばエクスプレスが東京駅に到達する日は来るのか」


つくばエクスプレスは1980年代に計画され、バブル崩壊・平成不況を経た2005年に開業したため、当初、経営を危ぶむ声がついて回りました。開業時の目標は「開業20年で黒字化、40年で累積赤字解消」でしたが、実際には4年後の2009年度に単年度黒字を達成すると、開業から12年目の2017年度に累積赤字を解消してしまったのです。1日あたりの輸送人員を見ると、開業翌年の2006年度に約19.5万人だったのが、2008年度に25万人、2012年度に30万人、2016年度に35万人を突破。2019年度は39.5万人に達しました。
そこに訪れたのがコロナ禍です。2020年は30万人以下に減少しましたが、首都圏の他路線は利用が戻らず苦しんでいる中、つくばエクスプレスは順調に回復します。2024年度は過去最高の40.3万人を記録すると、2025年度はさらに上回る42.3万人へ。2026年4月の速報値は対前年度で4%以上増加しており、今年も過去最高を更新しそうな勢いです。
路線の特性は、輸送人員を定期と定期外に分解すると見えてきます。つくばエクスプレスは大手私鉄と比較して定期利用比率が非常に高い路線です。2010年代は概ね66%、つまり3分の2を占めていました。2006年度の定期利用者数を100とすると、2017年度に200を超え、2019年度の224をピークに、コロナ禍を経た2025年度も219と高い水準をキープしています。

もちろんつくばエクスプレスにも、首都圏鉄道各社に共通するリモートワーク、フレックスタイムの普及による定期利用の減少は生じています。定期利用者は2019年度の26.4万人をピークに、2025年度は25.9万人に減少しましたが、他路線が1~2割減少しているのに対してわずかな減少にとどまっているのは特筆に値します。
そこで注目したいのは、2025年度に全体の61%となった定期利用比率の変化です。定期は微減、しかし比率が下がるのは定期外利用の増加を示しています。同様に2006年度を100とした定期外利用は2019年度まで170を超えることがありませんでした。ところが2022年度に170を超えると、2025年度は208に達したのです。コロナ禍以降の利用増は定期外が主導しているのです。
一般的に定期外は通勤・通学以外の外出や買い物の利用を指しますが、近年の定期外の増加は通勤に関連している可能性があります。つくばエクスプレスの定期券割引率は37.4%で、元を取るのに月19回の利用が必要です。リモートワークがしやすいIT・エンジニア系の企業、従業員が沿線に多い路線だけに、定期を持たず必要な時だけ運賃を支払うスタイルの利用者が増加したと解釈もできます。
いずれにせよ、つくばエクスプレスの利用者が高いペースで増加していることは確かです。背景にあるのは住宅開発です。2006年と2024年の沿線自治体の人口を比べると、つくば市+33%、流山市+38%、八潮市+24%、守谷市+29%など、いずれも大幅に増加。つくば市の人口は2026年5月に水戸市を超えて県内1位、人口増加率は市としては全国1位になりました。つまり沿線人口が増えるから鉄道利用も増えるという単純な構図です。

利用者の増加は鉄道会社にとって喜ばしい事ですが、同時に悩みの種でもあります。国土交通省は東京圏主要路線の平均混雑率を150%以下にする目標を立てており、毎年ピーク1時間の平均混雑率を調査しています。つくばエクスプレスの混雑率は2006年に139%でしたが、早くも2008年に150%を超えてしまいました。
輸送人員の増加に対して、1時間あたりの運行本数は開業時の16本から2007年は17本、2008年は20本、2012年は22本へ段階的に増便しましたが、旅客の増加ペースが上回ったため、2019年に混雑率は171%に達しました。

そこで首都圏新都市鉄道は、2018~2020年度の3か年中期経営計画で、新型車両「TX-3000系」の5編成導入、車両基地の増強、変電設備の改良など、輸送力増強のための「25本化事業」を策定します。ちなみにJR東日本で25本を超える路線は中央快速線、京浜東北線(北行)のみです。
2020年のダイヤ改正で25本化しますが、折しもコロナ禍が発生し、利用者が激減。2022年のダイヤ改正で24本に減便しますが、利用者の回復で2023年は154%まで増加してしまったため、2024年に25本に戻しています。しかし、それでも149%。2025年の調査結果はまだ発表されていませんが、間違いなく150%を超えているでしょう。しかしこれ以上の増発は困難です。
列車本数を増やせないのであれば、列車当たりの定員を増やすしかありません。そこで登場するのが車両の8両化です。つくばエクスプレスは開業以来、全列車が6両編成で定員は926人です。これを8両化すれば輸送力が約30%増加するため、大幅な輸送力増強が実現します。沿線人口の増加はまだ続くでしょうから、将来的な利用増加にも対応可能です。
つくばエクスプレスは駅のホーム、車庫について8両分に延長可能なスペースを確保しているため、最もハードルの高い大規模な土木工事や用地買収は必要ありません。しかし改修工事は終電から始発までの数時間のうちに、通常のメンテナンスと並行して行うため、完成は2030年代前半の予定です。それまでは混雑率の上昇は止まらないでしょう。
つくばエクスプレスがこれほど成功するなら、もっと早く整備しておけばよかったのではと思うかもしれません。つくばエクスプレスの計画は、国鉄が1970年代後半に構想した「常磐開発線」にさかのぼります。高度成長期に郊外人口が急激に増加し、東北、中央、総武、常磐の複々線・三複線化「通勤五方面作戦」が進められましたが、人口はさらに増加傾向にあり、その後も激しい混雑が生じていました。
これ以上の線増は用地確保が困難であるのみならず、同じことの繰り返しです。そこで国鉄は「需要追随型」ではなく、私鉄が行ったような「開発先行型」の新線建設が必要と考え、既設路線の中間に路線を整備する「開発線」を検討しました。
中央開発線、総武開発線、常磐開発線、東海道開発線、東北開発線、高崎開発線の6路線が計画されました。その中には、後に埼京線となった「高崎開発線」、京葉線となった「総武開発線」なども含まれています。そして「常磐開発線」から発展したのがつくばエクスプレスです。

常磐開発線について国鉄は「筑波学園都市(22万人)の開発整備にかんがみ、鉄道による交通の盲点となっている野田地区をも救済し、水戸に至る新線である。この開発線沿線は筑波学園都市及び野田線、関東鉄道沿線の住宅公団、民間デベロッパー等による住宅建設が活発である。新線建設により、筑波学園都市と都心間の業務客輸送、常磐線の混雑緩和が期待される」と説明しています。この性格はそのまま現在に受け継がれていると言ってよいでしょう。
この当時、常磐線の混雑は深刻でした。国鉄は1975年から1990年の15年で朝ラッシュの輸送人員が62%増加すると試算しており、現行のままでは乗車率は333%に達する恐れがありました。混雑緩和は急務でした。1980年代に入ると開発線構想は「第二常磐線」「常磐新線」と呼ばれるようになり、1985年の運輸政策審議会答申で整備路線に位置付けられました。
しかし1980年代に入ると、国鉄の経営は破綻状態に陥ったため、大規模な新線を建設する余力はありませんでした。構想はJR東日本に持ち越されますが、不採算路線となるリスクが高いと判断し、こちらも運営主体となることを拒否しました。やむなく第3セクターとして設立されたのが、首都圏新都市鉄道です。

開発線構想から一貫して懸案だったのが都心側のターミナルの立地です。常磐開発線は水戸から土浦、筑波学園都市、野田を経て、田端で山手貨物線に入り、池袋、新宿を経て大崎に乗り入れる構想でした。これは当時、東京駅一極集中が問題となっていたため新宿駅をサブターミナルとして育成する方針があったからです。
しかし当時の常磐線の旅客流動は東京側が7、新宿側が3だったので、新宿では常磐線からの転移が期待できません。そこで尾久駅付近で東北線に接続する尾久案、山手線貨物線に乗り入れない田端案、田端~北千住~秋葉原間に新交通システムを整備して接続する北千住案が浮上しますが、どれも決め手に欠けました。
最終的に、鉄道として北千住経由で秋葉原に乗り入れる案と、松戸付近で常磐線に合流し、金町から新金線(貨物線)に乗り入れて地下鉄11号線(半蔵門線)に乗り入れる案に絞り込まれ、1985年の答申で東京駅が起点に決まります。
にもかかわらず、実際のつくばエクスプレスのターミナルは秋葉原です。これには理由があります。第3セクターが設立された1988年、バブル経済の影響で都心の地価が高騰していたことから、都心の建設区間を短縮して建設費を抑制する必要がありました。そこで候補に浮上したのが、秋葉原です。秋葉原駅東口では、東京都神田青果市場跡地の再開発が計画されていました。新設する幅25mの都市計画道路下に駅を収容できることになり、建設費の抑制だけでなく、用地取得の問題も解決しました。
とはいえ秋葉原止まりは中途半端です。そのためつくばエクスプレスには開業前から秋葉原~東京間の延伸構想が存在し、2000年の運輸政策審議会答申にも「今後、検討すべき路線」に挙げられています。しかしそれから四半世紀、経営が好調にもかかわらず延伸は具体化しませんでした。
秋葉原駅は神田川沿いにあるワシントンホテルの杭を避けて延伸できるよう、地下35mという深い位置にあります。トンネルもJR線に沿って南下し、外濠通りに入ることができるので、大丈夫でしょう。問題は東京駅の立地でした。
例えば答申のフォローアップとして実施され、2007年に公表された「つくばエクスプレス東京駅延伸に関する検討結果」は、導入空間を確保しやすい「丸の内仲通り」地下への駅設置案をケーススタディとしています。
丸の内仲通りは丸ノ内線と千代田線・三田線の間、丸ビルと新丸ビルの裏にあり、東京駅からは少し歩きます。これでは秋葉原で乗り換えたほうが便利であり、本末転倒です。その上建設費は2kmの延伸に約1000億円を要すると試算しており、物価・人件費が高騰した現代なら1500億円以上になるはずです。現実的な計画ではありません。
膠着状態の東京延伸に訪れた転機が「都心部・臨海地域地下鉄構想」です。これは2016年の交通政策審議会答申で示された、東京駅と臨海部を結ぶ新たな地下鉄構想で、答申は「常磐新線延伸を一体で整備し、常磐新線との直通運転化等を含めた事業計画について、検討が行われることを期待」としています。

新しい地下鉄と一体的に建設すれば延伸工事の効率化、コスト低減が期待できるのに加え、車庫・工場を共用できるメリットがあります。都心を走る地下鉄は特に車両基地の整備コストが重いため、一体化はそういった建設費も大幅に削減できるのです。
これを受けて中央区が実施した調査は、銀座~国際展示場に地下鉄を単独整備した場合の総事業費約2600億円で費用便益比(B/C)は0.7程度、つまり投資する価値のない事業という判定でした。一方、つくばエクスプレス秋葉原~東京間と一体的に地下鉄を整備した場合、総事業費は約6500億円に増加しますが、B/Cは1.5~1.6に向上すると試算しています。地下鉄から見ても、つくばエクスプレスとの一体化には大きなメリットがありました。

東京都の「都心部・臨海地域地下鉄構想事業計画検討会」も2022年、「国際競争力強化の拠点であるつくば国際戦略総合特区と臨海部との対流促進が図れるとともに、事業性の向上も見込まれるため、常磐新線(TX)延伸との接続を今後検討」との事業計画案を策定するなど、両路線の一体整備が現実味を帯びてきました。
問題は2025年の調査で1750億円と試算された事業費の調達です。首都圏新都市鉄道の株主構成は非常に複雑で、茨城県18.05%、東京都17.65%、千葉県6.06%、埼玉県5.88%の他、沿線区市がそれぞれ出資しています。そして、話をややこしくしているのが、茨城県が要望する土浦~つくば間の延伸計画です。茨城県は土浦延伸を優先する考えで、秋葉原~東京間の単独・先行整備の目途は立っていません。
そうした中、東京都は2024年2月、都心部・臨海地域地下鉄の営業主体は都の直営または新設の第三セクターではなく、りんかい線を運営する東京臨海高速鉄道とする方針を公表しました。両路線に連絡線を設けて、りんかい線の八潮車両基地を共用しようという構想です。都は2040年までの開業を目指しているため、時間的余裕は残されていません。行方が不透明なつくばエクスプレスの延伸計画を待つより、都が90%以上を出資する東京臨海高速鉄道を活用した方がスムーズに進むと判断したのでしょう。
とはいえ東京駅八重洲口の常盤橋周辺に設置を予定する都心部・臨海地域地下鉄の東京駅は、つくばエクスプレスの東京延伸を想定した構造になるはずで、実現の芽が完全になくなるわけではありません。総事業費を沿線自治体だけで負担するのは困難ですが、国の補助制度を活用すれば、様々な選択肢があります。東京延伸の実現は何よりも、沿線自治体の合意形成にかかっていると言えるでしょう。

掲載日:2026年10月9日
提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/)