特別企画
ギャラリーやイベントでA列車をとことん楽しみましょう
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A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「デザインで『A列車で行こう9』を彩る。」
新作タイトル「A列車で行こう9 トレインコンストラクション」のビジュアル依頼がきた。A列車シリーズのアートデレクションに関わってから既に四半世紀近く、1997年の「A列車で行こう5」から数えて既に27年になる。四半世紀デザイナーの発想から完成まで、ユーザーが見ることのないビジュアル完成までの流れを紹介する。
まず、初回オリエン時に確認することは大体こんな感じ。
・新商品のセールスポイントは何か?
新機能や売りですね。
・今回、製作するものは何か?
例えば、メインビジュアルやタイトルロゴマーク、パッケージ、雑誌広告はやるのか?
店頭のPOP等。作るのか。
・発売日はいつか。
ラフ提出の日や、印刷物の納品スケジュールを逆算して確認する。
今回の新商品の売りは、ユーザーが自由に理想の車両を作れること。独自の車両工場で好きな形やペイント、細かいパーツを一からデザインし、世界に一つだけの鉄道車両を作ることができる。作った車両はマップに走らせ、写真を撮ったり、他のユーザーとも共有できる。
それって凄くないか! ついにここまで来たかのか!と内心驚いた。しかも今回は、初回の打ち合わせ時から、はっきりとしたコンセプトは決まっていた。担当者からは「色」と。
ビジュアルを探すにあたり、頭の中でキーワードを思い浮かべる。今回のテーマは色や色彩、グラデーション、組合せ自由、自分の車両を作れる、無限、広がる 云々等。また従来の電車や街並み、都市、開発。こういったことを連想しながら素材集めを開始。
初回ラフは22案程提出していた。クライアントの好みを見極めるため、こちら側の頭の整理にもなるので、絞り切らず思いついたアイディアや写真を提出することした。
ただ、大人の事情でラフ案の写真をそのままお見せすることはできないので、モザイクが入っている。絵柄については解説を踏まえて想像してほしい。
01案 自分で作れる電車のバリエーションを色で表現した案。さまざまな車両の整列と上下に塗られたカラフルな色。まさに、彩られる車両をイメージ。
02案 色違いの車両。補足のキャッチコピー「組合せ無限」(仮)を追加して商品のコンセプトに。
03案 車両を見せず、線路を走るさまざまな色の電車の光跡ラインで表現。ビジュアルを補足するために「車両数無限」「車両組合自由」のコピーを入れる。
04案は、様々な車両が画面奥から手前へ広がる操車場の写真。画面上部にカラフルな彩の雲の上にTRAIN CONSTRUCTIONのロゴを配置した案。この時点での商品タイトルロゴはアタリ。
ここで、最終決定になるビジュアルが登場する。ヨーロッパの車両に薄い虹色が乗った(彩られた)イメージの06案。「既存の電車にもカラフルな色が重なる」とラフの上部に解説もある。上の12案は電車からより俯瞰に見た都市に色が塗り込まれたパターン。カラフルな雲の上に車両が浮かぶ。もしこの2案で選ぶとしたら、電車なのか、都市の写真を使うのかで次の選択肢をチョイスできる。
ここで、違うアイディアを出す。新商品のポイント「ユーザーが自由に理想の車両を作れる」からの発想で車両工場のイメージを使用。色も工事現場のストライプと黄色を。実際の工事車両をどうするのかはこの時点で考えていない。10案はイラストを使ったアイコン風だが、他の写真案を生かすための噛ませ犬的な案で、これで決まるとは思っていない。ラフに捨て案を入れることで進行がスムーズになる。(球威が落ちた四半世紀デザイナー。ストレートだけでは三振は取れない、曲がらなくともカーブを取り入れないとダメなのだ。)
デッサンで何本も捨て線を引く。多数の線をひくことで最終的な線が見えてくる。ラフもそう。たくさんのラフを作り始めると脳内が活性化しアイディアが広がり始める。ここで、最終的なビジュアルの要素が見えてきた。担当との打ち合わせの中で「電車」や「都市」の写真、「空に広がるカラフルな色味」が要素として決まる。
全てではないが、ここまでが方向性のラフ22案の抜粋。次は方向性が決まった要素を入れ込んだ
ラフの提出。
四半世紀を経験したデザイナー、プレゼンや打ち合わせはクライアントへ出向くか、駅上の喫茶店で直接、頭を突き合わせてだった。今やネット時代。Zoomが大活躍。良いのか悪いのか、下半身パジャマでも大丈夫。マスクをすればノーメークでも安心な時代。
前回の打ち合わせを踏まえ、レインボーカラーは空に重ねる、写真は「電車」と「都市」、車両工場のイメージとして車輪や設計図を配置するラフを提出。Zoomでの話し合いで08案の電車案が決定。ただし、追加のオーダーとして「色」「彩」のコンセプトをはっきり表したいとのこと。色をつけるのは何か?絵の具?パステル?
ここで色鉛筆のアイディアが持ち上がり、ビジュアルに追加することになる。
実は今回、全部入りと言われているA9 Version5.0 コンプリートパックDXのパッケージも制作することになっていて、2回目提案の都市の写真案07は「A列車で行こう9 Version5.0 コンプリートパックDX+ with トレインコンストラクション」※で使われることになる。
(※「A列車で行こう9」本体プラス「A列車で行こう9」のバージョンアップが収録された、はじめて遊ぶ方の決定版。)▶︎「A列車で行こう9 Version5.0 コンプリートパックDX+ with トレインコンストラクション」
下記が製品になった都市のビジュアルとパッケージ。
3回目の提出案。レイアウトにも色鉛筆が配置され、仕上がりも見えてきた。03案の方向性で下段に車両工場の写真を追加することに。
それに合わせてキャッチコピー、タイトルロゴマークも決まる。
「自分の車両(カスタマイズ)で都市(まち)を彩る。」
「自分の色(カスタマイズ)で都市(まち)を走る。」
最終的に「自分の」を削除した
で決定! タイトルロゴマークもラフ案の方向で決まり。ブラッシュアップされたものがこちら。
カラフルな色彩の空の下に並ぶ車両。バランスよく配置された色とりどりの鉛筆。下部には車両工場をイメージさせる4枚の写真を配置、色味を合わせるために黄色を被せている。
当初、鉛筆をビジュアルに被せるイメージに違和感があったが、コンセプトを含め、仕上がりは満足な出来、楽しい作業はこれにて完成。
がしかし、作業はこれで終わらなかった……
ビジュアルに鉛筆を追加したことでクライアントから新たな要望が。色鉛筆を電車に見立て、製品を作って販売することになる。併せてマウスパッドも。
味噌ラーメン注文後、ライスと餃子を追加するみたいなこと。もう、満腹間違いなしの展開。ビールも追加したくなる。
【 アートディンクのサイトから抜粋 】
「A列車で行こう9 トレインコンストラクション」の発売にあたり、株式会社トンボ鉛筆との特別なコラボレーションで実現した「A列車で行こう オリジナル色鉛筆」。当ストアのみの限定商品です。A列車で行こうオリジナルデザインのパッケージに収められているのは、24色のカラフルな色鉛筆。その1本1本にもA列車色鉛筆と云うべきA列車で行こうオリジナル車両デザインが施されているなど、他では見ることのないこだわりの逸品です。
色鉛筆とマウスパッドは▶︎ARTDINK ONLINE STOREで購入できます。
以上が「A列車でいこう9 トレインコンストラクション」のメインビジュアル作成の一連の流れである。初回の打ち合わせからビジュアル完成までは約2ヶ月程。色鉛筆やマウスパッドの製作を含めてもサクサクと進行できた。
飲食店でまとめるのもどうかと思うが、初めからオーダーはラーメン(色)と決まっていた。ラーメンが食べたいお客にお寿司を出す必要はなく、味噌なのか醤油なのかを考えれば良かった。なので、今回のラフ案は多めにして、お客さんの好みを探れたのだ。結果的にお腹いっぱい、満足してもらうことができたと思う。たぶん。
最後に、A列車のゲームを楽しむのはもちろんだが、ビジュアルやロゴにも目を向けてもらえる
と嬉しい限りである。
掲載日:2025年1月17日
提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/)