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コラム

A列車jp発「お出かけ、北越急行」

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都市開発鉄道経営シミュレーション「A列車で行こう」に制作協力いただいている
各鉄道会社をフィーチャーして、歴史や沿線の魅力について触れていく応援企画。
今回ご紹介するのは「北越急行」。
さあ列車に乗ってお出かけしましょう。

そもそも「北越急行」って?

 ただ乗っているだけなら、時間はたんたんと過ぎていく。でも、知れば知るほど味わいが深くなる――。北越急行は、そんな鉄道かもしれません。

 スルメを例えたような表現ですが、かといって北越急行へのおでかけは、そんなワビサビ的な、染み入る渋さを堪能するような方向でもないのが、面白いところです。

 北越急行は新潟県を走る第三セクター鉄道で、長さ59.5kmのほくほく線、1路線のみを運行。魚沼盆地の六日町駅(新潟県南魚沼市)と、日本海に近い犀潟駅(新潟県上越市)を結びます。

 また、六日町駅ではJR東日本の上越線と、犀潟駅では同じくJR東日本の信越本線と接続。北越急行ほくほく線からJR越後湯沢駅、JR直江津駅まで直通する列車も多数です。

 この「ほくほく線」という名前は、愛称ではありません。正式な路線名です。

 1968(昭和43)年8月、国鉄の新線となるべく、「北越北線」の建設が始まりました。

 それからいろいろあって(後述)四半世紀以上の年月を要したのち、1997(平成9)年3月、「北越北線」は国鉄ではなく、第三セクター鉄道の北越急行が運営する「ほくほく線」として開業します。

 この開業前、沿線住民を対象に行ったアンケートの結果を踏まえて、路線名は「ほくほく線」とされました。「温かいイメージで親しみやすく、呼びやすい」が理由とのこと。

 ちなみに「北越ロマン線」が、もうひとつの路線名候補でした。

北越急行ほくほく線に課せられた「重大な使命」

 北越急行ほくほく線は、沿線住民の足になることにくわえ、ある大きな使命を持って建設されました。「関東地方と北陸地方の短絡」です。

 1997(平成9)年3月の開業と同時に、北越急行ほくほく線を経由して越後湯沢駅と富山駅、金沢駅などを結ぶ特急「はくたか」が登場しました。

 これによって東京方面と富山、金沢方面を結ぶメインルートが、「東海道新幹線と特急『しらさぎ』『加越』を米原駅で乗り継ぎ」から、「上越新幹線と特急『はくたか』を越後湯沢駅で乗り継ぎ」にかわります。

 そして北越急行ほくほく線は、1日に十数往復の特急「はくたか」が運行される「特急街道」になりました。

 また、「短絡」という使命を持って生まれたこともあり、北越急行ほくほく線は「日本最速」だったのもポイントです。

 特急「はくたか」の最高速度は160km/h。在来線で最速の列車でした(運転開始当初は140km/h)。

 その後、2010(平成22)年に京成電鉄の「スカイライナー」も160km/h運転を始めますが、現在に至るまで、160km/hに達した在来線列車は「はくたか」と「スカイライナー」だけです。

 ところで、設立当時に話を戻しましょう。「『北越北線』があるなら『北越南線』は?」と思うかもしれません。

 実は、ありました。「北越南線」の構想が。

 関東地方と北陸地方を短絡する路線の計画にあたって、魚沼盆地から日本海側へ、六日町から向かう「北越北線」案と、越後湯沢から向かう「北越南線」案、それぞれのルートが候補になり、誘致合戦が起きていました。

 もし「北越南線」ルートで開業していたら、路線名はどうなっていたでしょうね。

 ちなみに、特急「はくたか」用の681系、683系特急形電車には、JR西日本保有のものと、北越急行保有のものがありました。

 北越急行保有のものは、前面やラインの色が赤くなっているのが特徴で、車両愛称は「スノーラビットエクスプレス(SRE)」。数が少ないこともあってか、鉄道ファンには「スノラビ」と呼ばれ、特に人気だったように思います。

新幹線に進化した「はくたか」

 「特急街道」であったことから、北越急行の経営状況は「三セク鉄道の優等生」と評されるほど好調でした。

 しかし2015(平成27)年、状況が一変します。

 3月14日に北陸新幹線の長野~金沢間が延伸開業したことにともない、在来線特急「はくたか」は廃止。「関東地方と北陸地方の短絡」という大きな使命が、一夜にしてほぼ消えてしまったのです。

 会社経営的にも、尋常ではない変化が起きています。

 北越急行の収益は、9割が特急列車によるものでした。それがある日、消えたのです。

 とはいえ「新幹線の延伸開業」は、不測の事態ではありません。それを見越して、北越急行は動いてきました。

 特急「はくたか」による収益を「貯金」。ピーク時には約130億円に達した内部留保を元に、工夫を凝らして、北陸新幹線延伸開業後の時代を生き抜こうとしています。

 なお「はくたか」の名前は、北陸新幹線の列車名に受け継がれました。

 また、北越急行が保有していた681系、683系特急型電車はJR西日本に移籍し、デザインもJR西日本仕様に変更。特急「しらさぎ」などとして、第二の人生を送っています。

探してみたい「最速の痕跡」

 特急列車が廃止され、「地域の鉄道」として再出発した北越急行ほくほく線。そこにはかつて「最速の特急街道」だった名残があります。

 ローカル線の信号機は、ランプが縦に3灯ならぶ程度のものが多いですが、北越急行ほくほく線に乗ると、縦に5灯分、6灯分ならぶ長さをもった信号機が、しばしば現れます。

 この長い信号機は、かつて特急「はくたか」が高速走行するため、必要なものでした。

 信号機で「青」が1つ点灯している状況を「進行現示(G現示)」といいますが、このとき特急「はくたか」は130km/hまでしか出せません。

 「青」が2つ点灯する「高速進行現示(GG現示)」が出ていないと、日本最速の160km/hで走れないのです。

 この「高速進行現示」という特殊な表示を行うため、北越急行ほくほく線には、ランプを多く組み込める縦長の信号機が多く設置されました。

 「はくたか」が新幹線に進化した現在、北越急行ほくほく線で「高速進行現示」が出ることはありませんが、その信号機自体は残っているので、探してみてはいかがでしょうか。

 ちなみに北越急行ほくほく線は、普通列車に使われるHK100形電車も、優れた高速性能、加速性能が特徴です。理由は、背後から超高速で迫ってくる特急「はくたか」から逃げるため。

 「A列車で行こう9」「A列車で行こうExp.+」には、この北越急行HK100形電車を収録。特急車両ばかりのなかで走らせると、らしくて面白いかもしれませんね。

掘ったら逆に短くなったトンネル!?

 北越急行ほくほく線は、丘陵地帯を越えていく短絡線として建設されたこともあり、全線の7割近くがトンネルです。

 旅的な観点ではつまらなそうに思いますが、北越急行ほくほく線は違います。トンネル自体が特徴であり、魅力になっています。

 まつだい~ほくほく大島間にある、全長9130mの鍋立山トンネル。

 その工事中、周辺に「泥火山」が存在する「膨張性地山」と呼ばれる地盤にあたってしまい、「掘削しても強大な膨張圧で逆に100mも押し戻される」「掘り始めた地点より手前まで押し戻される」といった事態が発生。トンネル史のなかでも屈指の難工事の末、開通したトンネルです。

 建設に要した時間は、国鉄末期のゴタゴタで発生した4年の工事中断期間を含めて、22年近く。鍋立山トンネルの進捗状況が北越急行ほくほく線の開業時期を左右する、という状況でした。

 いま北越急行ほくほく線に乗車し、鍋立山トンネルを通っても、見た目的にはトンネルの途中が一部太くなっていて、そこで列車がすれ違えるのがちょっと珍しい――というぐらいしか、思うことはないかもしれません。

 ただ「泥火山」「膨張性地山」といったキーワード、その苦闘を知っていれば、きっとロマンが広がるトンネルになるでしょう。

「トンネル」で逆転の発想

 北越急行ほくほく線には、その7割近くがトンネルという特徴を逆手にとって、日本初のシアター・トレイン「ゆめぞら」が走っています。

 トンネルに入ると、車内の天井が巨大スクリーンと化し、そこへ「花火」「宇宙」「星座」などの迫力あふれるCG映像が展開。トンネルの暗闇が非日常の空間になるのです。

 「ゆめぞら」は、別料金不要で乗車できるのも嬉しいところ。運転日は、北越急行のホームページで確認できます。

都会とはまったく違う「ホームドア」

 北越急行ほくほく線では、美佐島駅(新潟県十日町市)が「名物駅」として知られていますが、その理由もトンネルです。

 美佐島駅があるのは全長10472m、赤倉トンネルの途中。山岳トンネル内に存在する珍しい駅で、地下およそ10mの場所がホームになっています。

 「ホームドア」の存在もポイントです。都会の駅にあるようなものではなく、頑丈な金属製の扉で、この扉がホームと、外界につながる地下通路を厳重に隔離。列車が到着するときだけ開きます。

 この扉も、トンネルが理由です。列車の走行により、トンネル内には強い風圧が発生、ホームが危険になることから、美佐島駅は列車の発着時以外、この扉でホームへ立ち入れないようにしています。風圧が駅の地下通路を伝わり、地上側に強風被害が発生することを防ぐ目的もあります。

 先述の通り北越急行ほくほく線は、日本最速だった在来線。特に「はくたか」通過によるトンネル内の風圧は強烈なため、こうした厳重な金属製の扉が設けられました。

 しかしそれでも、トンネル内を列車がやって来ると隙間風が発生し、接近の度合いなどによって風切音が変化。列車に押し出される空気の存在を、トコロテンのように実感することが可能です。

 ちなみに、かつて特急「はくたか」が通過していたときは、金属製の扉をすり抜ける隙間風が、隙間風なのにちょっと怖くなるぐらい、強く、激しかったです。

 特急「はくたか」が廃止されたあとも、この「ホームドア」は健在で、隙間風を楽しむことができます。

「トンネル」だけではありません

 トンネルの話が長くなりましたが、もちろん車窓も楽しめます。

 「日本三大河川」の信濃川を渡る十日町~まつだい間、米どころ新潟らしい田園地帯を高架線から一望できる、くびき~犀潟間。

 北越急行ほくほく線はトンネルが長いせいか、車窓にそれらがパッと広がると、より開放的に、印象的に見える気もします。

 また、沿線は日本屈指の豪雪地帯で、まつだい駅周辺では3m、4mといった積雪になることも。それだけで冬の北越急行ほくほく線は、旅情満点です。

 ちなみに、まつだい駅からアクセスできる松之山温泉には、5mほどの高さから雪の斜面に向かって婿を投げ落とす「むこ投げ」という小正月の伝統行事が存在。これもまた豪雪地帯らしくて、興味深いですね。

掲載日:2025年1月10日

この記事の筆者

恵知仁

鉄道ライター、乗り物ライター。ウェブメディアを立ち上げ、初代編集長を約6年務めた経験と、乗り物全般の取材で得た知識を元に記事を制作。一児(子鉄)の父。ウェブサイト「おやこてつ」運営。
「おやこてつ」URL:https://oyakotetsu.info/

提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/

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