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A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「続・こだわりマップの作り方:上田編 ④微調整、完成」

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コラム

A列車jp発「続・こだわりマップの作り方:上田編 ④微調整、完成」

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以前好評を博したコラム「こだわりマップの作り方」が帰ってきました。
今回は全四回に分けて、より詳しく「はじまるA列車」での再現マップづくりのコツをご紹介。
最終回は、ついに完成したマップの見どころを、現実と比較しながらお見せします。
 

①マップの設計はこちら

②地形、鉄道、バスはこちら

③建物建設~鉄道ダイヤはこちら

形になったマップを見直そう

 さてマップ作成、車両作成、ダイヤ作成がひと通り終わり、あとは細かいチェックをするだけです。列車やバスは設定どおりに運行しているか、観光客の動きは想定通りか、丁寧にチェックしましょう。作成途中に線路や道路を撤去するとダイヤが狂ってしまうことがあります。

 ここまでの制作時間は、設計図作成、ダイヤ作成を含めずゲーム操作時間だけで約350時間でした。これまでのマップも1つあたり400時間前後かけており、計10マップ作ったので軽く4000時間以上遊んでいるのですね。素晴らしいコスパのゲームです!

 再現度としては概ね満足の上田マップですが、観光客の動線はうまくいかない部分がありました。通常であれば所要時間が最短の鉄道ルートが選ばれるのですが、多数のバスを走らせた結果、マップ北部から真田傍陽線を経由して別所線・青木線方面の移動が、上田駅乗り換えでなくバスを複雑に乗り継ぐルートになってしまったのです。

 また上田駅から五島慶太未来創造館へ向かう観光客は、上田原乗り換えではなく、1日2本の別所線・青木線直通列車しか使ってくれません。2025年6月3日のVer.1.2.5アップデートで「観光客が優等列車にしか乗らない」不具合が解消されたとありますが、観光客のルート選好はイマイチ把握できていません。

 シナリオマップであれば前提が狂ってしまうので大手術が必要ですが、今回は再現マップなのと、締め切りの都合もあるので、泣く泣くそのままとしています。

 もうひとつ、「地域設定」についても触れておきましょう。コンストラクションモードではマップ上を4×4で最大16分割できます。地方都市は平成の大合併で周辺市町村を合併し、マップのほとんどがひとつの自治体になってしまっています。上田マップの地域設定は下図の通りですが、ここで実際に独立しているのは右上の「東御(市)」と左下の「青木(村)」だけ。他は全て「上田市」です。

(歴史的行政区域データセットβ版 ベクトルタイル地図を加工して作成)

 地域設定は行政の補助金設定やシナリオクリア条件以外には使わないので、現実の行政区域に忠実でもよいですし、設定しなくてもよいのですが、筆者は地域性を演出するために、実際より少し細かく設定しています。

 そこで参考になるのは、国立情報学研究所の北本朝展教授による「Geoshapeリポジトリ」の「歴史的地名/現代地名による統合検索」と「歴史的行政区域データセットβ版 ベクトルタイル地図」です。

 このデータベースを使えば、上田市との合併以前の市町村行政区域を、マップ形式で簡単に把握できます。時間をさかのぼるほど細かくなりますが、小さすぎると境界線設定がうまくいかないので、本マップでは1960年代の区域を参考に、上田市から「塩田」「真田」「丸子」を分離しています。

実際の風景と比較してみよう

 さて、最後に完成したマップの見どころを紹介していきましょう。マップはSwitch版にシナリオコード「7TXP09X」として公開しています。

(右図は©2025 Google)

 まずは上田駅付近の遠景です。手前は千曲川を渡る県道77号線と別所線の千曲川橋梁、その先に大規模商業施設「アリオ上田」と「上田市立美術館」、新幹線の向こうに上田城跡公園が望めます。Google Earthの画像と比較しても、いい具合に再現できたと思います。

(右図は©2025 Google)

 続いて上田城に着目しましょう。城跡公園の左手に「上田市民会館跡」があります。「跡」とあるように現在は使われていない建物ですが、存在感があるので「地方博物館」で代替しました。本作は全般的に2×2~3マスの背が低い建物が少ないので、今後のアップデートや次作では是非追加していただきたいと思います。

 実際の画像は木々に覆われ見えませんが、道路と公園の間にお濠があり、ここに真田傍陽線が走っていました。左図は上り列車が公園前駅を発車したところです。また右手前の学校(上田市立第二中学校)や、カーブしながら高台から下る「二の丸通り」など、想定通りの光景となりました。

(右写真は筆者撮影)

 ぐっとズームして、上田城の東虎口櫓門を写したのがこの画像です。ごく一部の切り取りではありますが、限られたオブジェクトでしっかりと再現できました。

(右図は©2025 Google)

 次は市街地に戻り、上田駅の東にあるショッピングセンター「イオンスタイル上田」です。施設脇の道路は、常田新橋で千曲川を渡って新幹線をくぐった後、カーブしながら高台に上り、小諸市へと続く県道79号線が始まります。駅西側の「アリオ上田」は「ショッピングモール本館」を使いましたが、こちらは「ショッピングモール別館」がちょうどいいですね。

(右図は©2025 Google)

 新幹線が千曲川を渡り、東山に入っていくところも見てみましょう。初めに記したように、本マップは制約の大きい新幹線を敷設しながら、できる限りリアルに地形を再現するのがテーマのひとつです。そのため実際以上に千曲川を曲げ、東山を引き伸ばしましたが、Google Earthの画像と比べても違和感ありません。

 なおゲーム画面と実物どちらの画像も、左側の地上線路を挟むようにスペースがありますが、これは信濃国分寺の僧寺、尼寺があった「国分寺史跡公園」です。明治・大正期に開業した信越本線と丸子線は遺跡中央を通過しており、かつては丸子線八日堂駅が最寄りでした。1969年の丸子線廃止後はしばらく駅がありませんでしたが、2002年に信濃国分寺駅が開業しています。本マップでは丸子線の「復活」によって両路線の駅が並ぶ形となりました。

 ただし実際の歴史はもう少し複雑です。信濃国分寺遺跡の発掘調査が行われたのは1960年代以降のこと。同じころ信越本線の複線化が検討されましたが、遺跡をこれ以上破壊するわけにいかないので、丸子線の廃線跡地を転用し、複線化を実現しています。つまり史実では複線の信越本線と丸子線は両立しないのですが、ゲームなので考えないようにしましょう。

まだまだ作りたくなる再現マップ

 もうひとつこだわったのが神川の断層と橋梁の再現です。傾斜量図の説明で触れたように、上田の河岸段丘は千曲川と支流に沿って複雑な段丘面を構成しており、特に神川は東岸と西岸で段が異なるユニークな構造をしています。

地理院地図「淡色地図」と「傾斜量図」を加工して作成

 上田マップでは下図のA~Dまで4つの橋を再現しています。Aは「U字型」の橋。Bは崖から入ってトンネルになり、地上に出る橋。Cは「逆U字型」で1段低い区域の住宅地にアクセスする橋。そしてDは建設中の国道18号バイパスを先取りして再現しました。

 以上が今回、作成した上田マップの設計から完成までの全過程です。他にも細かいテクニックは色々とありますが、既に相当なボリュームになってしまったのでこの辺りで終わりにしたいと思います。

 今度こそ引退、と言いたいところですが、新しいマップを作ると次のマップの構想が湧いてくるものです。有名観光地とユニークな地方私鉄の組み合わせでいうと、島根県「一畑電車」の出雲マップは面白そうですが、路線長が30kmを超えるため全線収録は難しそうです。

 ここまで松山の伊予鉄、長野の長野電鉄、静岡の静岡鉄道、福井の福井鉄道とえちぜん鉄道など、都市鉄道としての性質も持つ地方私鉄を題材にしてきましたが、同じ方向性では候補が尽きつつあります。上田電鉄は規模が小さいながら、廃線を活用してボリュームアップしたので、鉄道が完全廃止された地域の復活などの方向性も模索しています。

 また初めて同じ都市を再作成した福井マップでは、反省点を盛り込んでブラッシュアップする良い経験になりました。同様に「新幹線の呪縛」から逃れられなかった長野マップを作り直すのも選択肢ですね。ラフスケッチを作ってみましたが、市街地含めて綺麗に収まりそうな気がします。

地理院地図を加工して作成

 A列車jp特別企画としてのマップ作成は今回で最後にするつもりでしたが、アートディンクさんから熱い視線を感じるので、今後も新マップをお見せできる機会があるかもしれません!?お楽しみに!

Nintendo Switch 2

 

掲載日:2025年12月5日

この記事の筆者

枝久保達也

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。現在は鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行なうかたわら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』で第47回交通図書賞歴史部門受賞。

提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/

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