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A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「続・こだわりマップの作り方:上田編 ②地形、鉄道、バス」


前回「続・こだわりマップの作り方:上田編 ①マップの設計」はこちら

設計の目途が立ったのでいよいよ作り始めましょう。まずは以前の福井記事のおさらいです。筆者は全マスの高さを1段階上げ、Lサイズマップ320マスを80マスごとに分割(16分割)する目印を付けたテンプレートファイルを用意しており、毎回これを使って作成しています(Switch版 テンプレートナンバー「55V83H5」)。
通常の地形では地面を1段階下げると海になってしまいますが、あらかじめ全マスの高さを上げることで、地表のまま段差を作ることができます。コンストラクションモードにおける河川タイルは1マスの幅で存在感がなく、縦横にしか設置できません。
しかし1段階下げて湖タイルを川に見立てれば、幅の広い斜めの川を作ることができ、線路と斜めに交差できるため表現の幅が格段に広がります。上田マップではさらに堤防と堤防上の道路を設置し、上田駅から高架線で千曲川に向かって進み、堤防上の踏切を通過する構造を再現しました。

暴れ川である千曲川は有史以来、数多くの大水害を引き起こしており、2019年の東日本台風でも北陸新幹線の車庫浸水や、上田電鉄の千曲川橋梁崩落など深刻な被害が発生しました。両岸にそびえる堤防は千曲川と共存してきた上田の象徴でもあるのです。
テンプレートを読み込んだら、16分割した設計図を参考に、河川の部分の高度を下げ、丘や山を上げ、地形のアウトラインを固めます。アウトラインができたら、川や山の形を整えていきます。設計図だけでなく「陰影起伏図」「傾斜量図」とにらめっこしながら、彫刻を削り出すように地形を再現していきます。
実際にマップ作成に入ると、うまく収まらない部分が必ず出てきます。その際に道路や線路をいちいち撤去していては手間がかかるので、敷設予定地に「荒地」や「舗装」タイルで線を引き、駅は「砂浜」など別のタイルを使って目印を付けます。タイルは全体マップにも反映されるので、全体を把握しながら作業を進められます。
特に気を付けなければならないのは、一度設置すると撤去できない新幹線や空港、貿易港です。これらはスペースだけ確保しておいて、最後の最後に設置しましょう。また畑や一般住宅など一部を除き、物件があると土地造成ができません。こうした施設も地形を整え、線路と道路の仮置きをしてから設置しましょう。
下の画像は作業時間ごとのフローですが、ゲームの操作を始めてからざっくりとした形になるまでに「約45時間」を費やしています(設計図の作成時間は含めず)。仮置きが終了し、実際に道路を敷設しはじめたのが「約80時間」時点の画像です。山の形状が作り込まれたのが分かると思います。

続いて公共施設やショッピングセンター、大規模集合住宅(団地)、工場など主要施設の配置を始めたのが「約132時間」時点の画像です。公共施設はGoogleマップなどの検索では把握しづらいので、地図記号を参考にするのが効率的です。小規模な施設は後で設置したほうが効率的なので、今は手をつけません。

この時点で全体のイメージを掴むために森の木を配置しましたが、これは失敗でした。木は土地の造成に影響はありませんが、地形が隠れてしまい、修正が分かりにくくなってしまいます。木の配置はできるだけ後に回した方がよさそうです。

次に「約192時間」の画像ですが、この間に赤丸をつけた周辺部の地形を作り直しました。これも本来であれば早い段階で詰めておくべき作業でしたが、実際に作り始めると気になるところが出てくるものです。全体の完成度に影響するのであれば、手戻りになっても納得いくまで作り直した方が後悔しません。
「約226時間」の時点で中心部の設置が概ね完了し、周辺部に移っていきます。そして一通りの設置が終わり、実際に線路を敷設したのが「約272時間」です。ここでようやく新幹線を敷設し、交差部分も問題なく通過できました。
それでも思わぬ誤算があるものです。時間を進めて冬になり、広葉樹が枯れた時に、長野市寄りの山岳トンネルの土被り(トンネルと地表の距離)が不足し、山肌からトンネルの一部が露出してしまっていることに気づきました。新幹線の予定地はひと通りチェックしたはずでしたが、森に隠れて漏れていました。これも先に木を設置した弊害でした。新幹線は撤去できないので、残念ですがこのまま進めるしかありません。

地形の作成と大規模施設の配置がひと通り終わったら、マップの主役となる列車とバスを作成します。まずは現役車両として、しなの鉄道「SR1系(100番台、200番台)」、上田電鉄「1000系(東急カラー)」、「上田電鉄 6000系(さなだどりーむ号)」を作成。バスは地域の二大事業者である「上田バス」と「千曲バス」の路線車を再現しました。
車両は実車の写真とひたすらにらめっこしながら作り込みます。インターネット上には車両マニアの方々が様々な角度から映した写真が公開されていますので、これを参考に色味なども注意しながらステッカーを作成していきます。
プレイヤーの中には日本語のロゴを再現する方もいますが、筆者はローマ字に変換して「それっぽさ」を出しています。ロゴマークも簡略化して、遠目に見た時に雰囲気が伝わる程度にしています。ただし重要なのは車種選択と設備です。作りたい車両があっても、ピッタリ合うベースがなければ見送る勇気も必要です。

加えてテーマを補完する車両をいくつか用意しました。まずは上田電鉄(当時の社名は上田交通)が1986年に東急から譲り受け、1993年まで使用した「5000系」です。上田交通は1969年まで「上田丸子電鉄」と称していましたが、これは別所線、真田傍陽線、西丸子線を運行する上田電鉄と、丸子線を運行する丸子電鉄が1943年に合併したことに由来します。
そこで別所線と丸子線を本線格として、現行の「1000系」を導入し、それ以外の路線には旧型車両として「5000系」を充てることにしました。加えて1928年から1986年まで別所線を走った「モハ5250形」通称「丸窓電車」を用意し、実物と同様に別所温泉駅前と長野計器丸窓電車資料館に保存展示しました。

バスについては、上田市が上田バスと千曲バスに委託して運行する「オレンジバス」の専用車両、2019年に運行を終了した「上田市まちなか循環バスぐるっと上田丸」で使われていたレトロ仕様の小型バスを作成し、当時の路線を再現して走らせています。
アレンジしたのは上田市に隣接する東御市が運行するデマンドバス「とうみレッツ号」です。デマンドバスとは事前予約により運行するバスで、いわゆる路線バスとは異なりますが、人の流れを再現するためバス路線に格上げし、再現しました。
「とうみレッツ号」は大型のワンボックスカー(ハイエース)を使用していますが、本作では日野ポンチョをモデルとする「コミュニティバス」が最小サイズなので、こちらにデザインを流用しました。丸子地域循環バス「まりんこ号」もマイクロバスによる運行でしたが、同様に再現しました。
車両が完成したら、バスの設定に着手します。鉄道路線より細やかに走るバスを再現すれば街の解像度は格段に上がります。停留所の位置と路線は各事業者の路線図やGoogleマップでも把握できますが、2022年と最新のオープンフォーマット情報を地図上に表示できる「バスルート」がおすすめです。

バス停は鉄道駅より間隔が短いため、全てをマップに盛り込むことはできません。バスルートはバス停を選択すれば当該路線のみ表示できるため、位置関係と間隔を考慮しながら取捨選択しましょう。いきなりマップ全体にバス停を設置してしまうと、どこに何があるか分からなくなるので、路線単位で設置していくのが賢明です。
バス停を設置し、運行計画を設定すれば終わりではありません。運行計画設定時に表示されるバス路線図と実際の路線図を比較し、形状がかけ離れていた場合は、バス停の移設はもちろん、道路の位置も修正します。

左図の黄緑の線は最終的に設定した全バス路線で、右図で一例として「まりんこ号」西ルートを比較しています。走行する地域や路線の「くびれ」など、かなりいい感じです(自画自賛)。斜めに配置できない道路は線路以上に制約が大きく、完全再現は不可能なのですが、それでも両者が近づくほど、そのマップの精度は高いと言えるでしょう。他のルートなど、より詳細を見てみたいという方はSwitchシナリオコード「7TXP09X」で完成したマップを配布しています。
なお地方のバスは昨今、経営難や運転手不足で路線の統廃合が相次いでおり、バス路線が消えた地域も珍しくありません。上述の「まりんこ号」も2023年に運行終了しており、現在の丸子地域には千曲バス武石線、鹿教湯線を除いてバス路線は存在しません。それでは寂しいので、過去の発表資料やバスルートを参考に、2010年代末、2022年、現在の路線を取捨選択して再現しています。
また上田市には丸子線、西丸子線、青木線を代替したバス路線があります。今回はこれら鉄道線を「復活」させたため、鉄道と並行するバスは省略しました。本作のバス停・車庫は最大200か所しか設置できないため、Lサイズマップにまんべんなく設置すると、あっというまに上限に達してしまうからです。最後はバス停をひとつ撤去してはひとつ新設してを繰り返しながらバランスを取っていきます。
設定したバス路線と現実の路線図を比較すると、街の構造に不備が見つかるため、ここから最後の大規模な調整に入ります。上田マップではバス設定後、いくつかの大規模な修正を行いました。
その中でも大きなものは上田駅北部、信州上田医療センターや上田染谷丘高校のあるエリアです。前述の通り上田マップは実際の方角から40度ほど傾けており、上記施設は上田駅の北西に配置しました。しかし上田市街地循環バス西コースを設定すると、医療センターと高校が実際より西に寄っており、施設西側の住宅地「緑が丘」のスペースも不足していました。


そこで台地を削り、医療センターと高校を可能な限り東に寄せ、画像上部に見える「片側2車線道路」(国道18号線)も移設し、全面的に配置を見直しました。手間はかかりましたが、バス路線図が現実に近づきました。なお厳密には画像区間の国道18号線はほぼ片側1車線ですが、前後区間は片側2車線であり、バイパスの位置づけを明確にするためにあえてこのようにしています。マップの骨格は完成です。
次回は店舗や住宅など細かな建物を配置した後、いよいよダイヤ設定に着手します。

A列車で行こう はじまる観光計画 Nintendo Switch 2 Edition
Nintendo Switch 2
掲載日:2025年12月3日
提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/)