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A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「はじまるA列車シナリオ作成の裏側:ヘビに睨まれた街編」


ぐるぐると渦を巻くような地形が目を引く、ここは千巻山(ちまきやま)。

ある晩、その山肌が突然崩れ、一夜にして巨大なヘビの顔を思わせる姿へと変わりました。
崩落のキッカケは小規模な地震でしたが、やがて「ヘビ神さまのタタリ」と呼ばれる恐ろしいウワサが広まり、人々の間では「これは大地震の前触れに違いない」と不安の声がささやかれはじめました。

その影響で、町を離れる住民が後を絶たず、街は深刻な人口流出の危機に直面しています。
事態を重く見た自治体が、最初に選んだ手段はまさかの神頼み。地元の神社仏閣へお祓いをお願いしたところ「お祓いは引き受けるが、報酬の代わりに観光客をたくさん集めてほしい」との返事が返ってきました。
――お祓いなんかで事態を収拾できるの?
社長であるあなたは、ごく自然にそんな疑問を抱かれると思いますが……観光ルートを整備し集客に成功すれば、鉄道会社の利益につながるのもまた事実。まずは、指定された神社仏閣に観光客を呼び込むこと。それが、ヘビに睨まれた街を救う一筋の光なのです。

一方、ヘビ神さまのタタリの影響で、千巻山にある昔ながらの動物園にも廃止の影が忍び寄っています。果たして動物園も救うことができるのでしょうか。

舞台となる年代は、巳年の2013年スタート。
もう残りわずかですが、同じく巳年(2025年)のしめくくりにリリースされる「ヘビに睨まれた街」をぜひ遊んでみてもらえると嬉しいです。
……と、その前に、改めてご挨拶を。作者のヒラーラです。「シナリオの紹介がてら制作のウラ話をぜひ」とアートディンクさんからリクエストをいただきましたので、ここからは少し舞台裏のお話を。
「シナリオマップをご作成いただけませんでしょうか」
ある日届いたメールに、眠気も吹っ飛びました。
過去のコンテストで入賞したご縁があったとはいえ、まさか正式にシナリオ制作のご依頼がやって来るなんて、夢にも思っていませんでした。
ちなみに、過去のコンテストでは、Nintendo Switch「A列車で行こう はじまる観光計画」で「はばたけ 古墳エクスプレス」を、ニンテンドー3DS「A列車で行こう3D」で「鬼ヶ島ニュータウン」をそれぞれ制作しました。

とても光栄なお話ではありましたが、お引き受けするかどうか少し悩みました。
製品に初期収録されるシナリオに携わることへのプレッシャー。また、A列車のシナリオ制作には膨大な時間を要します。
一口にシナリオといってもA列車の場合、地形の作成、車両デザイン、会話テキスト、ゲームの目標設定からバランス調整などなど、小さなゲームを1本作る感覚なので作業量はてんこ盛り。物量の鬼です。
毎日フルに作業しても完成まで数カ月。もちろん自分にとって楽しい作業ではあるのですが、走っても走ってもゴールが見えないマラソンのようで、果たして完走できるのか不安は尽きません。(過去のコンテストも、実はわりと行き当たりばったりでした)

コンテストなら期限に間に合わなくても「ああ、応募できなかったな……」と悔しさに枕を濡らすだけで済みますが、お仕事となるとそうはいきません。
最終的には、アートディンクさんの熱意に押されて覚悟を決めましたが、季節は夏真っ盛り。猛暑でフラフラになりつつも、紆余曲折を経てなんとかゴールにたどり着くことができました。
上で「紆余曲折を経た」と書きましたが、最初期の案にはヘビの姿はありませんでした。
当初は、凶悪な暴力団・反社会的勢力が巣くう犯罪都市と化した街が舞台で、ならず者たちを追い払い、街に平穏を取り戻す――そんな、ちょっとワイルドな勧善懲悪シナリオを考えていました。
これまでとは毛色の違うシナリオに挑戦してみたかった、というのが理由です。

ところが、アートディンクさんのチェックでNGが入ります。
すべてがダメというわけではなく、「レーティングに抵触する可能性があるため、暴力団・反社など、暴力表現を想起させる単語は避けてほしい」とのことでした。
なるほど、これがCEROのカベというやつですね。ゲーム会社勤務の経験は無いので、これはなかなか新鮮な体験でした。
別の単語(たとえば海賊など)に置き換えれば、設定自体は問題ないとのことでしたが、なかなかしっくりくる代案が見つからず、最終的にこの案はお蔵入りとなりました。
もし、このシナリオで突き進んでいたら、飲酒・喫煙などの表現も盛り込んで、さらにNGの嵐を巻き起こしていた可能性も。将来のコンテストに応募される方は、このあたりも意識しておくと安心かもしれませんね。
一方、こちらは最初に提出したマップのラフです。

ヘビの代わりに、ドクロが鎮座しています。
当初の設定が犯罪都市だったこともあって「悪いヤツらの拠点はココだ」とひと目でわかるように、(我ながら単純ですが)この形を選んでいました。
ドクロの形状自体は、アートディンクさんのチェックで問題ナシだったので、Switch上でも試しに作ってみていたのですが……

ちょっとやりすぎたかもしれません。
ミニマップ上のドクロがチラチラ目に入るのも、それとなく呪われそうな雰囲気もあり……要は「なんか常にコワイ」ので自らボツを出して、この地形もお蔵入りになりました。
早く次のネタを考えないと時間がどんどん無くなるぞ。
と焦りつつも、ドクロの跡地でなんとなく地形をこねくりまわします。普段シナリオを作る時はこうやって地形を捏ねているうちに、発想が生まれます。
今回は、ぐるぐる巻きの――つまりトグロ状の地形が生まれました。冗談みたいな話ですが、ドクロ → トグロ → ヘビ という連想ゲームのような変遷を経て今に至ります。
大ヘビのような地形ができたことで、初期案以上に物語のイメージが広がり、結果的に満足のいくシナリオに仕上がったと感じています。
そんな経緯で生まれた「ヘビに睨まれた街」ですが、シナリオ制作には「A列車で行こう ひろがる観光ライン」付属のガイドブックが手放せません。これはもはや辞書ですね。

クリア条件や車両の年代・性能を一覧で確認できるのはもちろん、建物データの細かさも驚くほどマニアックです。
名のある子会社物件だけでなく、住宅や個人商店のような十把一絡げにされがちな建物まで全てに一言コメントが添えられていて「なるほど、この建物は写真屋とタバコ屋か。じゃあ、商店街の片隅に置いてみようかな」などと方針を決めるヒントにもなります。
また、常にしおりを入れてあるのがキャラクター紹介のページです。各キャラの一人称、他のキャラを何と呼ぶかの一覧表は、会話テキスト制作には欠かせません。これに合わせるだけでも、公式の雰囲気に近づけることが出来ます。

キャラクターといえば、アートディンク公式X(旧Twitter)にかつて投稿されていた「キャラクター詳細プロフィール」も永久保存版級です。登場キャラ全員の家族構成や性格にまつわるエピソードまで深掘りされたデータが満載で、シナリオ制作の際には、必ず参考にしています。
……と、ここまで書き連ねたあとでアートディンクさんに教えていただき、思わず赤面したのですが、キャラクター関連の情報は公式サイトにしっかり、しかも見やすくまとめられていました。気になる方は、ぜひそちらもチェックしてみてください。
先のガイドブックは「A列車で行こう はじまる観光計画 Nintendo Switch 2 Edition」のパッケージ版にも増補改訂版が付いてきますので、まだお持ちでない方にはオススメです。
と、ちょっと宣伝じみた感じになってしまいましたが、かつて「A列車で行こう3D」の付属ガイドブックがPDF版で発売されたように、今作のガイドブックもいつかPDF版または電子書籍化されたらいいなぁ……と密かに願っています。

「ヘビに睨まれた街」は Switch 2 Editonに収録されますが、シナリオ制作はコンテストの時と同じく、初代Switch「A列車で行こう はじまる観光計画」のコンストラクションモードで作っていました。
ですので、私自身も Switch 2 Edition で動かすのは初めて。どんなプレイ感覚になるのか、今から発売がとても楽しみです。

A列車で行こう はじまる観光計画 Nintendo Switch 2 Edition
Nintendo Switch 2
掲載日:2025年11月7日
提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/)