プライバシーポリシーサイトポリシー
SPECIAL IconSPECIAL

特別企画

ギャラリーやイベントでA列車をとことん楽しみましょう

A列車で行こう ポータルサイト > 特別企画 > A列車jp発「鉄道模型好きが行く博物館 こだわりと熱意が詰まった原鉄道模型博物館」

A列車で行こう はじまる観光計画 Nintendo Switch 2 Edition
Special Main Pic
コラム

A列車jp発「鉄道模型好きが行く博物館 こだわりと熱意が詰まった原鉄道模型博物館」

Special Main Pic
精巧な車両の造形、こだわりの走行音、緻密に作り込まれたジオラマの世界を、
鉄道模型好きの視点からご紹介します。

横浜に立地する鉄道模型の博物館

 

 横浜駅で下車し、東口からみなとみらい方面に向かうと横浜三井ビルディングが見えてくる。そのビルの外壁に「原鉄道模型博物館」という鉄道模型好きなら気になる看板が掲げられている。その名前の通り、日本でも珍しい鉄道模型を中心とした博物館だ。

 ここでは創設者の原信太郎氏が、その生涯で集めた鉄道模型と関連資料の一部を公開している。日本のみならず各国の鉄道模型車両や資料が充実して、横浜にいながら世界中の鉄道を堪能できる。鉄道ファンのみならず、子供連れにもおすすめのスポットだ。

 では、原信太郎氏とはどんな人物だろうか。原氏は1919年に東京で生まれた。幼い頃から鉄道に興味をもち、乗車、撮影、一番切符のコレクションなど幅広く鉄道趣味を満喫し、特に鉄道車両の模型製作が有名だ。車両の総数は購入したものも合わせて最終的に6000両近くだという。また興味は日本国内のみならず海外の鉄道にも及び、訪れた国は延べ380か国に上る。鉄道技術を学ぶために東京工業大学に入学し、戦後はコクヨ株式会社で開発技術担当を務めた。在職中に300以上の技術特許を請願・維持するなど技術者としても原氏は有名だ。

 早速入館して、原氏のコレクションとそれに込められた思いを紹介していく。

代表作で楽しむ「原模型の真髄」

 

 入館すると、すぐに第一展示室が見えてくる。ここに、原模型の中でも代表作といえる車両が展示されている。箱根登山鉄道や阪神電車など日本国内の車両のみならず、スイス国鉄の機関車やヨーロッパ各地を走り抜けたオリエント急行など外国の車両もある。

 これらの車両は原氏と同じ生まれ年であったり、初めて行った一人旅で乗ったりした原氏の節目と重なる車両たちだ。模型を通じて原氏の人生が垣間見える。すべて「1番ゲージ」(縮尺が1/32もしくは1/30.5、軌間45㎜)で作られており、とても大きい。Nゲージでは味わえない存在感だ。

 さらに車両は見た目だけでなく、走行機器まで再現されている。原氏が独自に集めた資料で制作したものだ。是非下からのぞき込んで、床下の造形も観察してみよう。

 中でも筆者が特に気になったのは「一号機関車」だ。この車両は原氏が小学6年生の時に初めて自作した鉄道模型で、オリジナル車両だ。車体は自宅の屋根を補修した際に余った板で制作し、パンタグラフはドイツ製の大きなものをイメージし針金でつくられている。小学6年生がベース無しで車両を作り上げる技術力に驚かされる。特にパンタグラフは構造が複雑で、この制作成功は原氏の中で大きな自信となったそうだ。

模型と資料で辿る文化と歴史

 

 続いて第二展示室に進んでみよう。左右の棚は「語る模型」と題して原氏が集めた車両をテーマ別に展示しており、鉄道の歴史を体感できる。世界各地を走った力自慢の機関車から、日本で普及し始めた頃の私鉄電車まで9つのテーマに別れている。その多くは鉄道の発展期から成熟期を駆け抜けた車両たちだ。この車両たちには木造で作られた車両やトロリーポールと呼ばれる集電装置など、今の鉄道車両には無い特徴が見られる。模型を通じて鉄道車両の変化を楽しんでみよう。

 筆者の一押しは「模型作りライブラリー」コーナーだ。原氏が10代~20代の頃に描いた鉄道車両の図面と、模型作りの資料として読んでいた海外の書籍が展示されている。図面は手描きとは思えないほど精巧だ。原氏はこの図面を元に鉄道模型の制作を進めた。

 中には、架空の車両の図面も見られる。日本国内の車両を元にしているものの、デザインは海外を走る車両の影響を感じさせる。これは広く海外の鉄道にまで興味が及んだ原氏らしい視点と言えそうだ。

コレクター、旅人としての原信太郎

 

 次の第三展示室では、原氏の鉄道模型以外のコレクションを深堀りしている。

 入って左手には原氏の集めた切符が見える。これは「一番切符」と呼ばれる、新規開業した鉄道路線ではじめて発行される切符だ。原氏は一番切符のコレクターとしても有名である。ケース内には帝都電鉄や伊豆急行などで購入した一番切符が展示されている。また、共に展示されている原氏のエピソードも必見だ。切符の販売開始を待つ時、寒さに耐えかねて待合室に車ごと乗り入れたとのこと。一番切符を入手するために、並々ならぬ情熱をささげていたことがわかる。

 右側では、原氏が旅行した際のエピソードを写真や映像、さらに原氏のコレクションを交えて展示している。原氏は鉄道を満喫するために定期的に旅行をしていた。まず小学5年生の時に関西一人旅をしたのを皮切りに、30代の終わりごろからは年に数回は海外旅行をして世界中の鉄道を見て回った。

 この時に撮影された世界各地の鉄道写真や映像は、その当時の様子が残された貴重な資料となっている。これらの写真はフォトライブラリーとしてデジタル化されており、館内に設置されたコンピューターで自由に閲覧できる。原氏が残した当時の鉄道風景を実際に来館して見てほしい。

 さらに奥へ進むと、世界的に見ても希少価値の高いコレクションが展示されている。世界に15台しかないメルクリン社の模型など、日本国内では原鉄道模型博物館にしか展示されていない品ばかりだ。どれも製造から100年近く経っているものだが、経年を感じさせないキレイな保管状況に驚かされる。

 この中で筆者はドイツのヴッパータールの懸垂電車(モノレール)が印象に残った。原氏は1980年代にこれをイギリスの電話オークションで競り落とした。驚くべきはその参加方法で、落札の機を伺うために、今よりも高額だった国際電話を繋ぎっぱなしにしたとのこと。

 実物の写真と模型を見比べると、車両や橋脚の形状などヴッパータールの街を走るモノレールの姿を忠実に再現していることが分かる。さらにこの模型の特徴は、配電盤に電球が設置されていることだ。これは脱線時のショートを防ぐためのもので、電気で動く模型として最初期の製品ならではといえる。このように再現度の高さ、機械としての貴重さから、原氏がそこまでしてでも手に入れたかった気持ちを理解できるだろう。

 展示されている模型は保存状態も良く、のちにヴッパータール市の博物館から譲ってほしいと申し出が来たほどだ。

 このように原氏が集めたコレクションは、日本国内に存在しているだけでも奇跡と言っても過言ではない品ばかりだ。原氏が世界各地から集めたコレクションを実際に来館して堪能してほしい。

ジオラマに込められた技術

 

 最後に原鉄道模型博物館の目玉である「いちばんテツモパーク」にやって来た。このジオラマは面積が約310㎡で、一般に公開されている1番ゲージの室内設備では世界最大級の規模を誇る。

 大きなジオラマながらも、山をクライミングする人々など、人形のストーリーまで細かく作り込みがなされている。オペラグラスを借りられ、車両と合わせてジオラマ細部の観察も楽しめる。

 筆者としては、線路を走る車両の走行音に注目してみてほしい。一般的な鉄道模型ではレールや車輪は真鍮や洋銀で作られている。生産や加工がしやすいためだ。しかし、原氏の模型では鉄である。加工はしづらくこまめなメンテナンスが必要になるものの、レール表面の質感や本物さながらの走行音など他の素材では実現できない魅力があるのだ。このように車両や情景のみならず、銀色に輝くレール表面の輝きやレールと車輪がすれる音なども合わせて堪能してほしい。

 このほか、原氏の模型にはモーターの工夫やパンタグラフを用いた架線集電など、リアルさに対する多数のこだわりが詰まっている。

 ジオラマの後ろにはオリエント急行をイメージした壁面窓がある。窓の中で、架線集電や台車の構造の工夫など、車両や線路に込められた原氏の技術を解説している。

 自宅の模型工房をイメージした展示もあり、こちらも必見だ。

 

ジオラマを走る車両たち

 

 原氏は、自宅のジオラマを「シャングリ・ラ鉄道」と名付けていた。イギリスの小説『失われた地平線』に登場するユートピア(理想郷)の名称に因んで、国境に関係なく、日本や世界の車両が同じレールを走る理想郷のような鉄道という意味がここには込められている。この理想郷というコンセプトは、原鉄道模型博物館のジオラマにも受け継がれている。

 取材で訪れた日のジオラマには、ドイツ国鉄を中心とした海外の機関車が客車や貨物をけん引し、中央の機関庫にはフランス国鉄をはじめとした世界各国の蒸気機関車が停車していた。横浜に居ながら鉄道模型の世界で異国情緒を味わえた。

 日本国内の車両はEF58形電気機関車が寝台列車の代名詞だったブルートレインをけん引していたほか、玉電の愛称で親しまれた東急玉川線の200形、かつて横浜を走った路面電車である横浜市電の1150形が走っていた。どれも原鉄道模型博物館の立地する京浜地区にゆかりの深い車両たちだ。

 さらに、ジオラマ中央の駅にある留置線には相鉄12000系が停車していた。この車両は相鉄線とJR線との直通運転開始に合わせて増備された新型車両だ。地元横浜を走ることもあって子どもからの人気が高いとのこと。

 停車している相鉄線を眺めていると、ドイツ国鉄の103形電気機関車が本線を通過していった。本来なら出会うことのない国境を越えた組み合わせは、原氏が目ざした鉄道模型の理想郷、平和な世界を体現したものと言える。

 ここで紹介した車両はごく一部で、その日によって展示車両は変わる。そのタイミングならではの車両たちとの出会い、組み合わせを楽しみながらジオラマという形の理想郷を満喫して欲しい。

 今回紹介したもの以外にも原鉄道模型博物館には貴重な品が多数展示されている。実際に訪れて、原氏のこだわりが詰まった車両たちと込められた技術をのぞいてほしい。

 「はじまるA列車」や「A列車で行こう9トレインコンストラクション」などのA列車で行こうシリーズの世界では多彩な車両素体をベースに、パーツを取り付けたり塗装を施したりしてゲームの中で楽しめる。原氏の描いた図面を参考にA列車の世界でオリジナル車両を作ってみるのも面白そうだ。

Nintendo Switch / Windows (Steam)

 

 

Windows (Steam)

 

掲載日:2025年10月10日

この記事の筆者

田都くん

1995年生まれ
ハンドルネームは「東急田園都市線」と奈良県公式マスコットキャラクターの「せんとくん」の掛け合わせ。雑誌鉄道ファンの裏表紙に出ていた「A列車で行こう7」の広告を見て、A列車シリーズの存在を知る。「A列車で行こうひろがる観光ライン」にて公式ガイドブックの執筆を担当。一番好きなA列車シリーズは「A列車で行こう6」系統の作品。

提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/

Atrainjp Logo

提供:A列車で行こうポータルサイト「A列車jp」(https://www.atrain.jp/

Atrainjp Logo